【RKRN】白い夜 (ページ5)

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六年い組白谷甲斐丸、六年い組の学級委員長にして、学級委員長委員会委員長を務めるこの学園のまとめ役。委員長を務めるほどの器量は持ち合わせているものの、一癖も二癖もある他の六年生に負けじと性格に難あり。
そのうちの一つが、極端に朝に弱いことだ。

「かおをあらう」

ぼそりと呟いて足から布団を退けた甲斐丸に、伊作はしょうがないなあ、と笑う。

「待ってね、その前に包帯変えちゃいたいから」

起きてすぐ、無意識のうちにぴっちりと正された寝巻き。その右腕の袖の部分を捲ると、伊作は腕から古びた包帯をくるくると解いた。その手つきを、甲斐丸はぼんやりと眺めている。

( また、いつの間にか…… )

そのうちに、反対側には仙蔵が座り、甲斐丸の髪の毛をつげ櫛で柔らかく梳かしていた。
理由は誰も知らないが、仙蔵はたまにこうやって甲斐丸の髪の毛を梳かしたがるし、とにかく世話を焼きたがる。甲斐丸にしてみれば、朝に意識が覚醒して目の前に仙蔵がいるのはもう見慣れた光景だった。

腕と手のひらにピリピリとした感覚が走り、それから肌に布の触る感覚。それを少しの間我慢していれば、終わったよ、と伊作は救急箱の中身を少し整理してからぱたりと閉じた。
甲斐丸は視線を伊作へと戻し、ありがとう、と礼を言った。

「明日からはもう包帯取っていいからね」
「わかった」

そうして立ち上がると、じゃあまた後で、と言って部屋を後にする。甲斐丸はひらひらと手を振った。
視線だけを動かして、再び仙蔵を見やる。腰よりも長い長髪が、さっと上でひとつに結われ、仙蔵は納得のいったように微笑んだ。

「完璧だ」
「どうもありがとう」

実際のところこの仙蔵の自己満足に礼を言う必要性はないのかもしれないが、甲斐丸は大して思考せずぼそぼそと礼を言う。
少し寝癖のついた細い髪が、顔の動きに合わせてふわりと揺れた。甲斐丸は立ち上がって、「井戸に行く」とだけ言ってふらりと障子に向かう。
仙蔵は、ああ、と頷いた。

「着替えて先に行っている。遅れるなよ」
「わかっている」

そうとだけ会話をすると、二人は別々の方向へと歩みだした。
春のあたたかさ。そう表現するに相応しい柔らかさを、今朝の日差しは持ち合わせていた。思わず目を細めながら、まだ少し低い位置にある太陽を見つめた。

( 嫌んなる…… )

寝巻きのあわせ襟を再びぴっちりと直しながら、甲斐丸は倦怠感を引きずって井戸端へ向かった。