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だから、甲斐丸は言ったのだ。
「わたしも時間があれば、今度おまえのアルバイトを手伝ってやる。 安心しろ、わたしも元々アルバイターだ」
彼女の言葉に、えっ、ときり丸は目を見張る。 そこでようやく、口を噤んでいた三人が復活した。
「確かにそうだ！ 甲斐丸は入学金以外自分でアルバイトをして稼いでいたんだったな！」
「昨年もう足りるだけ貯蓄したがな」
「だが今でもたまに、世話になった反物屋には行ってるよな」
「ああ、手伝いに行っている」
「……きり丸、今度は甲斐丸にも手伝ってもらうといい……」
長次の言葉に、きり丸は目を輝かせて、はい！ と頷いた。 その返事に、甲斐丸もどこか満足げな雰囲気をもった。
それから少し経ち、甲斐丸にも何の予定もない休日が訪れたために、今日のきり丸とのアルバイトは必然であるのだ。
「いやあ、今日はうどん屋でのアルバイトなんで、白谷先輩が一緒で助かります〜」
「そうか、わたしも料理には少し自信がある」
「いやいや！ 先輩は接客で！ お願いしまーす！」
「……わたしが接客？ ほんとうにいいのか」
二人は話しながらうどん屋への道を歩く。
自分が大して愛想のいい方ではないと自負している甲斐丸は、すっかり自分は裏方で調理の手伝いをするのだと思い込んでいたために、きり丸の言葉に少し驚いていた。
そんな甲斐丸に、きり丸ははい！と元気よく頷く。
(だって先輩、顔が超接客向きなんだから)
前々からきり丸は、甲斐丸の美少年ぶりで一儲けできないかと考えていたところはあった。 だが一度、それを乱太郎としんベヱの前でぽそっと口に出した際、ため息をついて呆れられてしまったのだった。
それでもきり丸はめげない。 今日はとことん、甲斐丸の顔の良さを使って客を集めようと考えていた。
「わたしはいつもの反物屋以外で接客業は殆ど経験がないのだが……」
「えぇっ、勿体ない！ ぼく、先輩ならきっと上手くできると思うんすけどねー」
「そう、か。 まあ今日はおまえのアルバイトだ。 おまえがそう言うのなら、やってみよう」
そうやって適当な会話を続けていくうちに、二人はアルバイト先の町のうどん屋へと到着した。
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作者名：星月夜 | 作成日時：2019年2月3日 19時
