【RKRN】白い夜 (ページ34)

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甲斐丸がこの休日、きり丸のアルバイトに同行することになったのは、恐らく至極当然のことだったろう。

「－－おお、甲斐丸！ただいま！」
「おかえり、こへ…… きり丸、どうしたのだ。疲れ切っているではないか」

少し前の休日のことだった。その休日、甲斐丸は学園長のお使いとしてあっちこっちに文を届けに走らされていて。忍術学園の門を潜り、ようやく入門表にサインを終え歩き出したところに、六年ろ組体育委員長の七松小平太、同じく図書委員長の中在家長次、文次郎に、へっとへとの一年は組図書委員摂津のきり丸と出くわしたのであった。

甲斐丸がそう言いながらきり丸に駆け寄りしゃがみ込めば、きり丸はげっそりとした顔で、実は、と話し出した。

「先輩方に子守りのアルバイトを手伝ってもらってたんすけど……」
「そうだ！私たちきり丸のアルバイトを手伝ってきたのだ！」
「子供たちをお手玉にするわ、危ないことをさせるわ、怖い笑顔を教えるわともう大変で」
「みんな喜んでいたぞ！細かいことは気にするな！」
「あれはただの危ないことではなーい！俺は子供たちにギンギンに忍術をだな……」
「怖い、笑顔……」

きり丸の言葉に、小平太と文次郎はつらつらと何か別の話をし始める。そのせいで、甲斐丸の耳にはきり丸の言葉があまり入ってこない。ふう、と息を吐いて、一度きり丸を優しく制止した。そして、二人を一瞥すると、

「うるさい」

甲斐丸は、そうピシャリと一言言い放った。するとどうして、二人は急に静かになった。落ち込む長次に対しては、「言葉の綾だぞ」と冷静に告げる。
その瞬間、なんだかきり丸は、六年生のほんとうの上下関係を垣間見た気がして、口を開けたままたらりと額に汗をかいていた。

「いいぞきり丸、続けて」

視線をきり丸へと戻した甲斐丸に、あ、ああはい、きり丸はと少し吃りながら応えると、続けた。

「それで、なんというか、いちいち先輩たちのことを気にしていたら一人でする以上に疲れてしまって……」

きり丸がそう言うと、そうだったのか、と甲斐丸はきり丸の頭をぽんぽんと撫ぜた。

「よく頑張ったな。偉いぞきり丸」

せんぱあい、ときり丸は弱々しい声を出す。
甲斐丸は三人が後輩思いだと言うことも、それを上手く表現できない不器用なところも知っていたが、一年生であり、まだそういったところを俯瞰的に見れないきり丸には、確かに気の毒なことではあったかな、と思った。