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「天狼って、とっても賢い馬なんですね」
「そうだよ、左吉。 彼はわたし達が何を話しているのかその殆どを理解している。 こんなに敏な馬は他にいないだろう」
「それに真白くて毛並みも綺麗です。 そういえば、くの一教室の山本シナ先生の馬も珍しい白い毛色をしていました」
伝七の言葉に、甲斐丸はあの若い方の山本シナ先生の乗馬姿を思い出す。 そうして、ああ、と応えた。
「シナ先生の馬も確かに白い馬だが、天狼とは少し違っていてな。 シナ先生の愛馬は、"白"という色を持っているが、天狼は体に持っている色素が薄いため、白に見えるのだ」
甲斐丸の解説に、流石の一年い組も揃って首を傾げた。 まだ少し難しかったか、と甲斐丸は内心反省すると、別の相違を教えた。
「では一番簡単な違いだが、天狼の瞳は青いだろう。 シナ先生の馬は黒色の目をしている」
「あっ、確かに！」
「天狼の目って、すごく綺麗な青色だ！」
四人は互いに顔を見合わせて、そういえばそうだ！と理解を深めていた。
確かに天狼の色は真白に近いから、最初からこう説明した方がよかったな、と甲斐丸は思う。
すると天狼が、甲斐丸に顔を擦り寄せてきた。
「あぁ、わかったわかった」
「先輩、天狼はなんと？」
彦四郎の言葉に、伝七と左吉はちょっと笑ってしまいそうになる。 だって至極真面目な顔で、彦四郎はまるでほんとうに天狼と甲斐丸が、同じ言語使って会話をしているように言うのだから。
「どうやら、自分の走っている姿を見せたいらしい。 丁度今日は矢馳せ馬をする予定だったから、今から時間があれば少し見ていくといい」
甲斐丸がそう告げると、四人は目を見張った。
(白谷先輩の、流鏑馬)
(弓術どころか、)
(馬術まで)
(見せてもらえちゃうの〜！？)
願ってもない申し出だったので、四人はすぐさま首を縦に振って、見ます、もちろんです、お願いします、などと一斉に喋り出した。 あまりの食い付きに驚いて、甲斐丸はどうどう、と四人を落ち着かせる。
「では少し離れて見ていてくれ。 天狼、頼むぞ」
甲斐丸の声に、天狼がヒヒーンと勇ましく嘶く。
そうしてやっと、話が冒頭へ戻るというわけだ。
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作者名：星月夜 | 作成日時：2019年2月3日 19時
