【RKRN】白い夜 (ページ4)

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麗らかな日差しが障子から差し込み、個々の部屋に明るい朝の訪れを告げていた。
ここ、忍術学園の朝はどの学年もそう変わらず騒がしい。このくらいの時間にもなれば、長屋の廊下を走り回る足音や、井戸端から「おはよう」の挨拶、会話などが聞こえてくる。

「－－おはよう、甲斐丸。起きているか？」

もちろん、個人の部屋からもそれは変わらない。
スパン、と障子を勢いよく開け放つと、既に完璧に洗顔を終え、朝の浮腫みもすっきりととれているらしい六年い組、作法委員会委員長の立花仙蔵がその部屋の主の名を呼んだ。
しぃん、とその声をかけられた本人は沈黙を喫しているが。仙蔵はひとつ頷くと、つらつらと続けた。

「今日は起きているな、いい心がけだ。お前は起きてから四半時近くはその状態だからな。最高学年となった今直すべきだとは思うが、まあここまで良くなったのだ、これ以上強制はしまい。ああ、そういえばもうすぐ伊作が来るぞ。包帯を変えに、」
「もう来たよ」

少々説明口調で部屋に足を踏み入れながら、懐から櫛を取り出した仙蔵に、障子から顔をひょっこりと覗かせた六年は組、保健委員会委員長の善法寺伊作が声をかけると、仙蔵は僅かに肩を揺らして後ろを振り返った。
おはよう、と挨拶を交わす。そして、「早かったな」と仙蔵が言うと、伊作は待ってましたといわんばかりにぱぁっと笑った。

「そうなんだよ、今日はここに来るまでに一度も転ばなかったんだ！」
「逆にこの十間程の距離で毎度転ぶ方が難しいと思うのだが？」
「いやあ、今日は朝から幸運だ」

ああ、と仙蔵は瞳を伏せながら肩を竦めた。自分と伊作ではどれだけ運に対しての基準がズレているのか。別に知りたくもなかった。
伊作は大胆に開けられた障子を両手で閉めながら部屋に入ると、救急箱を取り出して消毒液やらなんやらを取り出した。
するとその時、敷布団から起きあがって座ったまんまだった状態の甲斐丸が、ぱちりと瞬きをしてから首を動かして辺りを見回した。お、と仙蔵と伊作は声を合わせる。

「……おはよう」

伊作と仙蔵の姿を認めた甲斐丸は、寝起き特有の普段よりワントーン低い声で小さく言った。二人はそれににこりと笑うと、おはよう、と返した。
重そうなまぶたを無理やり押し上げるような様子のまま、甲斐丸はくしゃりとその青藤色の髪の毛をかきあげた。