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「そんな時、図書委員で今日の当番の二年い組、能勢久作先輩に言われたんです」
「自分は去年、先輩方にお話を聞いてその宿題をこなしたって」
四人の話に、甲斐丸は得心がいった。 それと同時に思い出す。 自分は一年の暮れに転校してきたのでこの宿題はこなしていないが、毎年このくらいの時期になると一年生が高学年の先輩方に集まって得意武器を見せてもらっている、というなんとも微笑ましい光景が見られるのだ。
ちなみに今年、甲斐丸がその立場に立つのは二度目になる。 去年は現二年い組の保健委員、川西左近に教えを乞われたのをよく覚えている。
「それで、わたしのところに？」
「そうです！」
「弓矢についてのお話、聞かせてください！」
四人はきらきらと目を輝かせた。
「……今どき弓矢だなんて、随分と古風なものだ。 火器ほど派手ではないぞ、いいのか」
甲斐丸は言いながら、確か去年も同じようなことを左近に訊いたな、と思っていた。
四人は一瞬きょとんとして顔を見合わせる。 そうしてから、にっこりと笑った。
「僕たち、白谷先輩が弓矢が得意だと聞いていたから、どうしても調べたくなったんです」
「だから、その時点で他の武器とは比較のしようがありません！」
左吉と伝七が嬉嬉として言うと、一平と彦四郎もそれに同調した。
「なのでもしよろしかったら……」
「僕たちに先輩の得意武器のことを教えてください！」
その言葉の数々に、甲斐丸は表情が乏しいながらも、どこか朗らかな雰囲気をまといながら、そうか、とひとつ頷いた。
「ではまず弓矢の簡単な歴史からでいいか」
甲斐丸の声に、四人はぱっと明るい顔で、お願いします！と頷いた。
こうして、甲斐丸は滔滔と弓矢の伝来から今に至るまで、知っている限りの重要なことを四人に伝えた。 四人は、一所懸命に紙に筆を滑らせていた。
「−−というわけで、弓矢は古くから神事にも深く関わりがあり、鉄砲という便利な武器が伝来したこんにちも、この国からは決して切っても切り離せない存在なのだ」
甲斐丸が最後にそう話をまとめると、四人は甲斐丸に眩しいほどに輝く視線を送ってきた。
( まぶしい…… )
その眩さに、甲斐丸は思わず目を細める。
「白谷先輩、ありがとうございました！」
「ありがとうございました！」
全員が声を揃えて甲斐丸に言う。
「弓矢ってすごく古い歴史があるんだね」
「なんだかどの武器よりもかっこよく見えてきちゃった」
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作者名：星月夜 | 作成日時：2019年2月3日 19時
