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パカラ、パカラ、と馬の蹄が土を蹴る子気味良い音が辺りに響いて。 そうしてから、ヒュッ、と風を切る音がした。 カ、という音に導かれるように視線をやれば、木製の的のど真ん中に鏑矢が穿たれている。 もう一度、そうして最後にもうひとつ。 甲斐丸は馬を走らせながら狙いを定めて矢を放つ。 その動作に、一縷も迷いはなかった。
その光景を見ていた一年い組の後輩四人は、口を半開きにしたままその場に固まっていた。
甲斐丸が佐目毛の馬で四人の近くまで来、手馴れたように馬から降り撫でながら手綱を引く。
「……あまり参考にならなかっただろうか」
自身を見ながら動かない四人を眺めると、甲斐丸は少し不安げにそう言った。
四人は一斉にぶんぶんと首を横に振る。
「い、いえ！ そんなことないです！」
「あんまり綺麗だったものですから」
「ボクたちすっかり、」
「見入ってしまって……」
甲斐丸はその言葉に、少し目を丸くしてから屈んで、四人と視線を合わせた。
どうしてこんな状況になっているのか。 それを知るには、少し時間を遡る。
「天狼、今日も頼むよ」
校舎から少し離れた雑木林を抜けた先。 その比較的地面の平らで開けた場所に、簡易的な馬場があった。 どうやって作られたか経緯は省くが、とにかくその馬場で甲斐丸は時折騎射の練習をしている。
天狼、と呼ばれた青い目をした佐目毛の馬は、甲斐丸の雄の愛馬だ。 とても利口そうな顔をしていて、甲斐丸の言葉に応えるように大きく嘶く。
それに甲斐丸は顔の力を抜くと、弓を手に持ち天狼に跨った。 勿論鏑矢は筒に入れて背負っている。
「白谷甲斐丸先輩〜！」
「白谷せんぱあい！」
その時だ。 林から声が聞こえて、甲斐丸は「こっちだ」と自分を呼ぶ声に向かって叫んだ。
ガサガサと葉をかき分ける音がしばらく続いてから、ようやく姿を現したのは一年い組の後輩達四人であった。
作法委員の黒門伝七、会計委員の任暁左吉、それに既に一度登場済みの上ノ島一平と今福彦四郎。
「どうしたのだ、四人揃って」
甲斐丸は跨ったばかりの馬から降り、手網を引きながら四人に近づくと、地面に片膝をついてそう尋ねた。
それが、と四人は答える。
「今日の宿題が、何か武器をひとつ決めてその用途と歴史について簡単にまとめてくることなんです」
「弓矢にしようと決めたのはよかったのですが、ボクたちは優秀ない組なので、図書室で調べているうちにどれもこれも全部を写そうと躍起になってしまって……」
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作者名：星月夜 | 作成日時：2019年2月3日 19時
