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解説をしてみせるよう促すと、団蔵は少々焦りながら思考する様子を見せた。 うーん、と唸りながらなんとか捻り出そうとしている。
そうしてしばらく後、わかった! と大きな声を発した。
「まず上下に馬を用意します!」
「バカ旦那……」
「馬どこからきたの」
虎若と金吾のツッコミに、団蔵は、やっぱりなーと少し恥ずかしそうに笑っていた。
それでも「よく頑張った」と甲斐丸は労うと、団蔵の代わりに説明をする。
「上下の人々が心を合わせれば勝利できる、といった意味合いのものだ」
「へえ〜」
全員が三つ目を紙に写し終えたのを認めると、甲斐丸は次を言ってみせるよう催促した。
はい! と作法委員の笹山兵太夫が手を挙げたので、「兵太夫」と甲斐丸は名を呼んだ。
「
「
「不虞を待つ者は勝つ」
「意味は?」
「え、えと、しっかりと準備を整えて、油断している敵と当たれば勝つ、ってことかなあ」
「正解だ。 よくできました」
嬉しそうにふわっと笑った兵太夫に、隣に座る三治郎が「兵太夫すごい!」と拍手をしていた。
えへへ、と兵太夫は少し頬を赤く染めている。
「はい! じゃあ次ぼく!」
「はい三治郎」
同室の兵太夫が頑張っているからか、三治郎もやる気に満ちた顔つきでぴんと手を挙げた。
「えっと……」
「将の」
だが無計画だったのかいきなり詰まり、甲斐丸は朗らかな口調で読みを教えた。 あっ、と三治郎が続ける。
「将の、のう? にして、君の……」
「御」
「御せざる者は、勝つ!」
「というと?」
「えぇっ、えーと、……わ、わかりません」
「大丈夫、よくできました」
三治郎が眉を八の字にしてそう言うと、今度は兵太夫が「上手だったよ!」と三治郎を褒めた。 その声に、三治郎は控えめにふわりと笑う。
「これは、将軍が有能であり、主君がそれに干渉しなければ勝つ、という意味だ」
「なんか難し〜……」
「ではもっと簡単に言うと、将軍の頭が良くて、更には君主がそれの邪魔をしなければ勝てる、という事だ」
「なるほどぉ」
まあ、これは別に今のこの国には重要ではないが、と甲斐丸はまたつい一年は組には理解できない一言をこぼしながら、最後の仕上げへと入るのだった。
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作者名:星月夜 | 作成日時:2019年2月3日 19時