第九話 ページ9
「どうでしょうか。」
シャー、と、試着室のカーテンが開ける。
その身には、赤くて美しい着物が纏われ、
着付けを担当した店員さんは疲れた表情
一つ見せずに、隣で笑ってらっしゃる。
「んー、なんかちょっと．．．」
けど日向さんはそれに反して険しい顔をする。
ね、似合わないでしょ、
私なんかにこんなのほんっと要らないから．．．
心の中でぶつぶつといろんなことを唱えるが、
所詮心の声。外に聞こえるはずも無く。
「じゃあ、次これ！」
日向さんはマネキンが着ている着物を
指差し、そう言った。
・
・
・
「うわぁ．．．！これにしよう！俺これがいいと思う！
これください！」
「え、ちょ」
「ありがとうございます、日向様。 直ぐにご用意致しますのでこちらへ」
え、ほんと、ちょっと待ってください。
あれからというもの、
中々納得いくものが見つからないのか、
幾度と着せかえられました。
そして、今選んだのが、
明らかにこの店の中でも上物の着物。
白地に美しいしだれ桜が描かれている。
花の描かれ方がひとつひとつ違っていて、
その美しさは一目見ただけで私にも分かった。
「ひ、日向さんほんとにいいんでしょうか．．．」
日向さんに近づき、ぼそっと問う。
すると、(この感じ．．．デジャヴだ。)
ニッと笑って耳打ち返した。
「いいの！俺が買いたいんだから！」
「．．．は、はい。」
デスヨネー。
頑固な日向さんに、私は引き下がるしかない。
「会計してくるから、待ってて！」
「はい。」
営業スマイルに更に拍車のかかった
店長さんの元へ、日向は走る。
相変わらず、すばしこい。
そんなことを考えながら、
広い店内を眺めるように歩く。
すると、
「．．．あっ。」
偶然あった鏡に自分が映る。
「．．．」
綺麗だと、そう思った。
いや、綺麗なのは自分じゃなくて
着物の方なんだけど。
でも、なんか、私に似合うのを選んでくれた
っていう感じが、分かるよ。
そりゃ試着の時はすごい顔して唸ってたけどさ。
．．．今まで適当に選んでたからかな。
これが似合ってるって、思ってしまう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1247人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
颯 - 黒尾鉄朗がっごいいいいい (2015年3月21日 9時) (
レス) id: 6d17eb9fea (このIDを非表示/違反報告)
りっさん - 夜久さん素晴らしいです。グッジョブです！！ (2015年3月18日 22時) (レス) id: 9319e60931 (このIDを非表示/違反報告)
玲 - 第29話の三行目の黒尾様が＿＿ってところ黒男様になっています！あ、これわざとでしたか？？でも気になったので指摘してしまいました；；； (2015年3月15日 16時) (レス) id: 0fb612002d (このIDを非表示/違反報告)
星月夜(プロフ) - かよさん» 本当ですか！！？もうその一言だけで今胸がいっぱいになりました。ありがとうございます．．．！ (2015年3月15日 11時) (レス) id: c4da7f23ba (このIDを非表示/違反報告)
星月夜(プロフ) - ７時さん» 嬉しいです．．．！ありがとうございます！！赤葦さんかっこいいですよね(笑) な、殴られました！？さらっと言ってますが大丈夫ですか！？(笑) 更新頑張ります！！ (2015年3月15日 11時) (レス) id: c4da7f23ba (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：星月夜 | 作成日時：2015年2月26日 12時
