其の参(文次郎視点) ページ4
「面白そうな事になってきたが、私は作法委員会に女装の化粧について講義しに行かねば」
仙蔵が去っていった後、手持ち無沙汰になった俺はAの鏡を覗き込んだが、笑えて化粧出来ないから見ないでと言われて仕方なく“にんたまの友”を開いて仕上がりを待った。
「出来たよ」
「お、ようやく出来たか──…」
何か一つでも粗を探して指摘してやろうと思ったのに、振り向いたAはそんな気も失せるほど綺麗だった。
Aってこんなに美人だったか?
こいつは化粧するとこんなにも良くなるのか…。
いや、元はいい方なんだが、その良さが化粧により更に引き出されている。これはいい化粧だ。
「なんて顔で人の顔見てるのよ」
「どんな顔だってんだよ」
「化け物みたいな…ぎゃー!!」
拳を振り上げたら叫ばれた。
…と、こんな事してる場合ではなかった。
「先程は失礼な事を言って悪かった。お前の化粧技術を見込んで頼みがある。俺に化粧を施してはくれないか!?」
「えっ、何で?」
「実は今日の女装の実習、不合格になっちまって。明日の補習までに何とか及第点が貰えるような化粧を覚えたい。正直自分でどこをどうすれば女に近付けるか分からなくなっているんだ」
仙蔵に頼んでもいいのだが、今までも何度か助言を求めてこの有様だ。女装の上手い仙蔵に頼むより本物の女であるAに頼んだ方がより良い結果が得られるかもしれない。
「なるほどね。分かった!文次郎君を今よりうんと可愛くしてあげる!」
Aは快諾してくれた。人助けというよりは面白がっているように見えるが、背に腹はかえられん。
化粧を落とすとAは俺の頰に手を添え、白粉を叩き始めた。
「文次郎君はさぁ、色々塗ったくり過ぎなんだよ。折角元が男前なんだから、それを活かさなきゃ」
はあ?俺が男前だと?どこがだ。いつもちやほや騒がれるのは仙蔵の方だというのに。
「ほい、まず白粉はこんな感じね」
「んん?これだけでいいのか?」
鏡を見てみたがどうも物足りない感じがする。
「これ以上つけると白浮きするの。顔と首の色が違うと違和感あるでしょ」
「ほう」
「次、目の化粧をするよ。色を少しずつ足して…目を開けてみて」
(…ち、近いッ!!)
Aの整った顔が目と鼻の先にある。左手は俺の顎をクイと持ち上げて、右手の指がこめかみ辺りに添えられて、Aはじっと俺の左目を見ている。
こんなの、接吻前の距離感じゃないかッ!?
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玉虫厨子(プロフ) - ユリリンさん» 初めまして。コメントありがとうございます!更新頑張りますのでどうぞ温かい目で見てやって下さい🙇 (4月17日 5時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
ユリリン(プロフ) - 初めまして。凄く面白そうな作品ですね。更新楽しみにしています。 (4月17日 5時) (レス) @page4 id: 6ebc36a5f7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2024年4月16日 15時