一章 ページ3
武装探偵社のある、赤茶けたビル。
ある少女が、それを見上げてため息をついた。
こんなちっぽけな建物を落とせなんて、私も随分と舐められたものだな………。
そう思いながら、昇降機を使って上階へと向かう。
“武装探偵社”と書かれた看板のあるドアを、無遠慮に開け放った。
「失礼する」
少女の、凛とした声が部屋に響いた。
「私は『猟犬』の者だ。探偵社に不審な動きありと聞き、参上した」
ぐるりと室内を見回して、少女は値踏みするようにある探偵社員で視線を止める。
「ここに、『35人殺し』はいるな?」
少女に見つめられた、探偵社員ー泉鏡花は肩を揺らす。動揺の色に支配された瞳には、少女しか映っていない。
「貴女が、そうなのね?ーどうするの?自分を捕まえに来た私を、その懐にある短剣で殺したい?」
鏡花は動かなかった。
「探偵社は、人殺しなんてしない」
それだけ云うと、懐から取り出した短剣を床に置いた。
「ふうん。………殺意はない、と云う事ね。全くつまらない」
少女は微笑むと、踵を返して去っていく。
その途中で足を止め、揺らいだ瞳で探偵社員を見つめた。
「私の名は桑床麗華。ーひとつ、忠告しておくわ。
少女ー麗華は今度こそ去っていく。
ひとつの忠告を残す事を、猟犬最後の仕事として。
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〇〇(プロフ) - めちゃくちゃお話好きですん (2023年2月23日 21時) (レス) @page12 id: d8c35401ee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:茉里 | 作成日時:2019年6月13日 16時