寒暖差アレルギー (ym ar × in

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記憶喪失

それはもちろん、
記憶がない、思い出を忘れたということ。

忘れてしまったのは
大ちゃんとの楽しい思い出や時間。
俺やその他の友達、家族のこと。

______自分のこと。



忘れられた人も、もちろん苦しい。
けど、一番苦しそうだったのは
伊野尾ちゃんだった。

自分が誰だかわからなくて、
自分が忘れたことでみんな悲しんでいたから。

だけど_____



______

5月9日


事故から一年。

突然。伊野尾ちゃんは言った

「…大ちゃん」



俺の目をはっきりと見て
“山田”ではなく、”大ちゃん”と。


訂正しようと思った

でも、大ちゃんの代わりに伊野尾ちゃんを
幸せにしてあげたい、とも思ったりして。



「俺、日記を書いてたっぽいんだけどさ。
日記に書いてあったんだよ、
大ちゃんは一番身近にいる、優しい人って。

____それって君でしょ?」



でも、

幸せにしてあげたい、なんてそんな
優しい理由じゃなかったんだ。



伊野尾ちゃんの日記を覗き込めば
そこには”大ちゃん”の文字がたくさんあった。

3人で遊んだはずの思い出にも
”山田”の文字はなかった。

探しても、探しても。
全て大ちゃんで埋め尽くされていた。


楽しかった3人の思い出は、
伊野尾ちゃんの中では
大ちゃんと、2人での思い出でしかなかった。



悔しかった。



だから、自然と涙が流れた。



その涙に、君は少し戸惑いつつも言った


「思い出すの遅れてごめん。

4月15日誕生日だったんだね。


おめでとう。大ちゃん。」



皮肉にも今日は俺の誕生日。5月9日。
皮肉にも今日は大ちゃんの命日。


「プレゼントはないんだけど…
俺をプレゼント!……なんてね」

そう言って笑う伊野尾ちゃんを抱き締めた


「…プレゼントありがとう」



君の心が欲しかった
偽りの愛でも、満たされていたかった



そう言って、付き合い始めたんだ

____大ちゃんとして。

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