21. ページ7
.
「昔よく家族みんなで来たよなぁ」
波止場付近にある、いつもの場所へと二人で向かう。
秋ちゃんが大学に上がるまで、この穴場スポットで家族みんなで花火を見るのが毎年恒例だった。
「そうそう。最初あの場所見つけたのがさ、」
『やっぱり、………こんなの間違ってる』
平気なフリして笑う秋ちゃんなんて、もうこれ以上見たくないよ…。
『こんなのいいわけないっ…』
「……Aっ、！」
きっと間に合う。どうかお願い、間に合って。
呼び止める秋ちゃんの声を背に、私は走り出した。
駅に着くと、キャリーケースを持った楓さんが向かい側のホームで電車を待っていた。
あと少し、あと少しであの場所まで行けるのにもう足が限界だ。それに、上手く息ができない。
それでも、伝えなきゃ。今、伝えなきゃもう…。
「……楓っ！」
もう一度走りだそうとしたそのとき、階段を駆け上がってきた秋ちゃんの声が大きく響いた。
「千秋………なん、で、」
「ごめん………」
「……なにが、？」
「今までずっと、………ひとりで苦しませて、…ごめん」
「ちょっと…、なんのこ、と…？」
「……………ごめ、ん」
「なん、で謝るの………千秋には関係ないでしょ……！ もう行ってよっ……」
泣きじゃくる楓さんの声が、二人しかいない夜のホームに溶けてゆく。
胸をたたく楓さんの腕をそっと、秋ちゃんが抱き寄せた。
そんな二人を見て、胸が痛みだす。
……美咲ちゃん、ごめんね。ごめんなさい。
でもこれで、……よかった、んだよね。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1198人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
I(プロフ) - みどくろさん» みどくろさん、ありがとうございます！！ お互いがんばりましょうっ(*^^*) (2016年9月6日 18時) (
レス) id: f5b592d975 (このIDを非表示/違反報告)
みどくろ - Iさん» 続編おめでとうございます！勉強がんばりますね♪ (2016年9月6日 16時) (レス) id: d4bef834e4 (このIDを非表示/違反報告)
I(プロフ) - みどくろさん» 無理なさらずにお勉強がんばってくださいね^ ^ お時間あるときにまた遊びにきてください♪ (2016年9月5日 22時) (レス) id: f5b592d975 (このIDを非表示/違反報告)
I(プロフ) - みどくろさん» いえいえ、デシャヴってやつかもしれないです…（笑）でもこうして、みどくろさんが初めてコメントしてくださったことが本当に嬉しいです！！ ぁ、その手がありましたか！お勉強忙しそうですね…そういえばそのドラマに賢人くん出てましたね！ (2016年9月5日 22時) (レス) id: f5b592d975 (このIDを非表示/違反報告)
みどくろ - Iさん» あらら。実はコメしてたり...したかもです。。どっちにしろ名前覚えているなんですごい！流石！私の姉がYouTubeにうpされた好きことの動画見ているんですけど、なかなか時間無くて...(￣ー￣)今は勉強の息抜きに35歳の高校生を見てます。時間があったら見てみますね！ (2016年9月5日 21時) (レス) id: d4bef834e4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：I
| 作成日時：2016年8月16日 17時
