Fireplace ページ23
*
僕の部屋を見渡すと、至って特徴のない
真っ黒なものや暗いものたちで溢れている。
壁紙もカーペットも、ベッドもタンスも
ソファーも電飾もアロマキャンドルも、
光を放つビームプロジェクターでさえも全部
黒々しているか、浅黒い色や褪せた色だ。
だから僕は、自分の部屋は黒いと信じていた。
ドアのすぐ横に白い壁暖炉があったのだが、
目の前にあるのに何故か見えない存在であった。
何故だろうか。
それは恐らく、それを見えない存在だと
気付いた瞬間が、暑い夏だったからかもしれない。
冬の夜。
僕はその暖炉をとても重宝していた。
必要ないのにわざわざ火を点けたまま
音楽を聴いたりもしたし、
暖炉の上をどう飾るか何日も悩んだりした。
その冬、その暖炉は僕の戦争のような日々の
最高の戦利品だった。
しかし夏になった日。
僕はその存在を完璧に忘れた。
たまに来客があると格好付けて
数分弱、関心を寄せるのに使う時以外は
完全に僕の人生から消え去った。
酒に酔うと武勇伝のように並べ立てる
若かりし頃の恋愛話のように
他人に見栄を張るための何かに転落してしまった。
…
真っ黒な部屋の中で真っ白なものを
忘れることが出来るのだろうか。
色を、姿形が忘れられることを
止められるのだろうか。
存在は証明を望む。
自分の存在理由と価値を説明して
その価値の理解が得られた瞬間、
眼識が与えられる。
冬には愛情を受けていた僕の壁暖炉は
夏には存在すら忘れ去られた。
*
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作者名：Y | 作成日時：2017年11月20日 13時
