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ぼぅっとその姿を眺めていると、
スタッフさんとの話を終えた様子のAが
こちらへ向かってくる。
ほら、やっぱりなんか嘘物みたいだ。
「オッパ、ハルト！」
「そろそろ出番なんで行きますね！」
「時間あったら撮影も見てってください」
「当たり前じゃん、」
「来れなかったメンバーにどうだったか伝えないとだしね」
「あははっ笑」
「お願いしますね、オッパ」
ジフニヒョンと談笑するA。
近くで見ると余計だな、
なんて、さっきからずっとAだけを目で追っている。
ヒョンたちと会話してるのに、
目はずっとA。
俺は会話にも入らずぼぅっと眺めてた。
『ハルト！』
『…え？』
『頑張ってくるね？』
『…うん』
俺に向けられた目。
カラコンで普段よりスモークグレーなその目は、どこか神秘的だ。
「ヌナ、」
「ん？」
「ヌナ、すごい綺麗です」
「！」
咄嗟に出た言葉。
別に言おうと思ってた訳じゃない。
近くでその目を見た時、
気がついたら口走っていた。
少し見開いた目。
驚いて、いるんだろう。
でも、そんなことどうでもいい、
そう思うほど、
俺はAに見惚れていた。
「ハルトがヌナって言うの珍しいね」
「ありがとう、自信でてきた、」
「ヌナ、行ってくるね」
そう言うと、にこっと微笑み、
撮影場所へと向かっていった。
俺へ向けた柔らかい笑顔、
くるっと向きを変え、
高いヒールを鳴らし歩くその姿さえ、
ほんとに嘘物みたい、
嘘物みたいに、美しい。
「やぁ、ハルト！」
「はい？」
「やるなぁ！」
「何がですか」
「お前が綺麗とか！」
「いつも言ってるじゃないですか」
「Aの前以外で、な？」
「…」
横にいたジフニヒョンは、
嬉しそうに俺の肩を叩きながら揶揄う。
ヒョンの隣で言うべきじゃなかった。
そう思うけどもう遅い。
それに、それが事実なのも、
俺自身がよく知っている。
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作者名：もなか | 作成日時：2022年10月4日 12時
