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金曜日の15時。
久しぶりにそこへ足を運んだ。
「あらぁ。久しぶりじゃないの」
優しい笑顔で迎え入れてくれたおばあちゃんに安心した。いつもの席に不死川さんの姿はない。キョロキョロと周りを見渡すも、どこにも居なかった。
「お婆ちゃん、彼は…」
「あの子なら今日も来るんじゃないかね?毎週来るたび、アンタのこと探してたんよ?」
「そう、なの……?」
「他の曜日に来てなかったか?とか、最後に見たのはいつだ?って、心配しとったんよ」
「そうなんだ……」
餡蜜を注文して、いつもの席に座った。久しぶりに口にしたその大好物はやはり美味しくて、でもどこか物足りないのは隣に彼がいないからで。
……もう来ないだろうか。
仮に、不死川さんがこの3ヶ月間、姿を現さなくなった私を此処で待っていてくれたんだとしたら……
来るかどうかも分からない相手を待つと言うことがどんなにもどかしいことか、今身を持って痛感している。
「もう来ねぇんじゃねぇのかよ…」
頭上から降ってきた不機嫌な声に顔を上げると、目を細めて私を見下ろす不死川さんがいて。ハァと大きなため息をついて私の隣に腰を下ろした。
「で?」
「………え?」
「突然来なくなった理由はなんだァ」
「………」
「この間のは理由になってねぇだろ?」
ちらりと隣を盗み見ると、その眼はいつになく真剣で、逃れられそうにない。
「お館様のお屋敷で不死川さんがどなたかとお話しているのを聞いたんです…」
あの日、「好きじゃない」「泣かせた罪滅ぼし」という言葉が聞こえたことをそのまま嘘偽りなく伝えた。思い出すだけで胸がキュッと痛くなるけれど、冷静に…冷静に…。
「不死川さん優しいから……無理して私と会ってくれているんだと思ったんです。申し訳なくって。だからもう行くのはやめようと思って……」
「………」
この間の不死川さんの言葉が頭に浮かぶ。
ー俺は自分があぁしたくてした
ー行きたいとこに行って、
ー会いたい奴に会った
「でもこの間、"会いたい奴"とか……言うんですもん…。眠れないことも気にかけてくださったり、優しくしてくれたりするから………狡いです」
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もみじ(プロフ) - 覚悟を決めし者さん» 決めしちゃんありがとう!(;;)私はここではお話投稿しなくなるけど、相変わらず決めしちゃんのファンだし、これからも決めしちゃんのお話を読者として楽しみにしてるね^^才能に溢れた決めしちゃんが大好きでした!ビッグラヴ!!!! (2021年3月27日 19時) (レス) id: a7517d1b2b (このIDを非表示/違反報告)
覚悟を決めし者(プロフ) - 短い間だったけれど、仲良くしてくれてありがとう……!もみじちゃんと出会えてよかったです!!連投ごめん!!!!ビッグラヴ!!!!! (2021年3月26日 22時) (レス) id: 37c69db3c0 (このIDを非表示/違反報告)
覚悟を決めし者(プロフ) - もみじちゃん……!!コメントが遅れて申し訳ない( ; ; )完結おめでとう!!!恋愛に鈍くて初心な不死川さんらしさが溢れた素敵な作品でした……!!もみじちゃんが占ツク卒業しちゃうの死ぬほど寂しいけど、ずっと応援してるからね!! (2021年3月26日 22時) (レス) id: 37c69db3c0 (このIDを非表示/違反報告)
もみじ(プロフ) - 蓮さん» 蓮ちゃんありがとうっ!もう蓮ちゃんに言いたいのは……ただただ大好き!!!!それだけ!!!!これからは蓮ファンクラブ代表として読み手にまわるね^^本当にありがとな!!! (2021年3月25日 16時) (レス) id: a7517d1b2b (このIDを非表示/違反報告)
もみじ(プロフ) - 古猫丸さん» わっ…まさか古猫丸様からコメントをいただけると思っておらず震えておりますっ。私には勿体ないお褒めのお言葉…本当に嬉しいです。ありがとうございます(;;)私、古猫丸様の書く煉獄さんがすっごく大好きなのでこれからも読みにいかせていただきますね^^ (2021年3月25日 16時) (レス) id: a7517d1b2b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もみじ | 作成日時:2021年3月1日 19時