4口 ページ4
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「…いいえ。A様を護衛するのが今最優先ですので、御安心ください」
「…本当に良いのですね?こんな急にすみません」
「いえ、大丈夫ですよ」
ごめんと何回も謝る姿を見て、他の権力者とは違う何かを感じた。このような奴らを嫌ほど護衛していたが、護衛して当然だという態度を取られることが殆どだ。
申し訳なさそうに笑う彼女を見て、こんな奴もいるんだな、と感心する。
そこからは普通に観光名所へ連れて行ったりと護衛をした。
楽しそうに笑う彼女を見ていると何故か苦痛じゃない。
「土方さん!見てください、とても可愛らしいですよ」
「えぇ、可愛らしいですね」
20歳を超えていると聞いたが、屈折のない眩しい笑顔にこちらまでもが笑顔になる。だが所作の一つ一つや佇まいがとても美しく、洗練されていることが伺える。
他の奴らと違い煙草を吸うことを許してくれた彼女に、俺はだいぶ気楽にいれた。
「土方スペシャルって言うんですが、食べます?」
「…ん、量が多くて酸っぱいですけど、私にあった量で食べるととても美味しそうです!」
「ほっ、本当か!?…んんっ、そ、そうですか」
土方スペシャルを認めてくれたときは思わず抱きしめたくなった。なんやかんやあり、太陽は西を傾いていた。
「眩し…っ」
西日が眩しく、私は目を細めた。キラキラと茜色に輝く夕日をビル群の中から覗く。尾張ではこんな建物はないので、夕日を隠す建物などないが、江戸は角度を変えるだけで太陽をすっぽりと隠してしまう建物ばかりだ。
最後に江戸で1番栄えているかぶき町へ行きたいと伝える。
「かぶき町はA様を連れていくには危険があります」
「……それは私が高貴な身分だからですか、土方さん」
土方さんの瞳孔がきゅっ、としまる。
私はいつも間にか、彼に心を開いていたようだ。高貴な身分扱いをされてここまで心を痛めたことなんてない。
確かに私は箱入り娘でこの世の汚いところなんて知らない。綺麗な部分しか見させてもらえなかったから。
この身分というものがなければ、この町に住んでいる方々のように元気に走り回って、ワイワイと過ごせたのだろうか。
「…私は確かに身分は高い。と言っても、たかが地方の藩主の娘。この廃刀令の時代にそぐわないのです。ですが、父からは権力をつなぎとめるための道具として扱われる。自分の意思など無いと同然」
私ね土方さんの方を見て微笑む。
「惨めでしょう?」
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ミーこ(プロフ) - さちさん» ありがとうございます☺️❤️🔥なにせ私が土方さん推しなものでして笑 (2022年11月6日 19時) (レス) id: 3ecbe7c0be (このIDを非表示/違反報告)
さち - 続きが気になります!土方さんいいですよね。 (2022年10月31日 17時) (レス) @page6 id: 0e3bc286c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミーこ | 作成日時:2022年10月10日 19時