依存 ページ4
土方さんの作戦はこうだ。私は一切男と会話を取らず、銀時だけを見る。そして銀時を安心させたあと、土方さんらがワイワイ騒ぎ、精神状態を戻す。との事だ。
｢Aに負担がかかるが頼む。銀時を救えるのはお前しかいねぇ｣
土方さんは昔から熱が入ると私をAと下の名前で呼ぶ。私はそれを汲み取る。そして銀時を救おうと決心する。
｢俺からもお願いします！旦那を救えるのはAさんだけです！｣
｢土方さん…山崎さん…ありがとうございます｣
2人からの激励に私は涙腺がつい緩んでしまう。そして頭を深々と下げた。
．
｢た、ただいま〜…あれ、まだ帰ってないのかな｣
薄暗い万事屋は少し不気味だ。心細くなる。こんな時には銀時といたい。今の彼じゃ到底無理だろうけど。
今朝の、｢お前の作る飯が食いてぇんだ｣という言葉を思い出し、すき焼きの準備をする。私がたくさん働いていた時に貯めていた貯金で牛肉をたくさん買った。
色々な具材を入れ、グツグツ煮込んでいると、｢ただいまヨー！｣と言う神楽ちゃんの声が聞こえた。私は火を止め、お玉持ったまま玄関先まで走る。
｢おかえりなさい、みんな。今日はすき焼きだよ｣
神楽ちゃんと新八くんはすき焼きと聞くと、｢肉だーっ！｣と言って走っていった。
私は銀時の方を向き、ニコッと微笑んだ。銀時は頬を赤く染めると、私を抱きしめた。｢ごめんな、朝のあれ｣と耳許で囁いた。私は｢ううん、全然気にしてないよ｣と銀時の頭を撫でた。
チャンスは1回しかない。やりきらないと。私はお玉を持つ手に力をぐっ、と入れた。
｢食べよっか！｣
｢今日は寒かったネ！猫探してる間に、銀ちゃんと新八が焼き芋買ってて勝手にぬくぬくしてたアルよ！？酷いアル！｣
神楽ちゃんが肉ばかり食べながら今日の出来事を楽しそうに話す。｢はははっ、そうなんだ！酷いね、神楽ちゃん、お肉ばっか食べないの｣私が神楽ちゃんに注意すると、他2人の方がぴく、と動いた。2人の皿に目を移すと、見事にお肉しか入っていなかった。
｢ちょっと！ちゃんと野菜も食べなきゃ。私野菜食べない人は好きになれないなぁ｣
と私が言うと、｢野菜美味しい"い"い"！｣と言いながら野菜を食べていた。銀時だけを眼中に入れていたらこんな可愛くなるものなのだろうか。私は頬杖をついて、万事屋の食事を眺めていた。
｢A…その…新八ぐらいなら喋ってもいい…よ｣
銀時の告白に私はびっくりして箸を落とした。
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作者名：ミーこ | 作成日時：2021年3月21日 21時
