其ノ弐拾壱 ページ22
Noside(A)
その日の朝は心地がよかった。
今日はいつも頑張っているということで特別に休暇が貰えた。
と言っても、することも無ければ行くところもない。
「……実弥さん帰ってきてるかな……」
なんてふと思うが、任務終わりで疲れているだろうから休み明けに会おうと、ふるふると首を振って考えることをやめた。
明日休みだからといってしのぶが昨日の夜に好きなものを買ってくださいと、小銭を渡してきたが欲しいものもない。
よそ行きの着物もなければ、他に着ていけるものもない。
せっかくだから美味しい甘味処を探しにでも行こうかと、立ち上がるも隊服で行くのはな……と渋ってまた座るの繰り返し。
「……どうしようか」
せっかく好意で貰った休暇だ、その辺をぶらぶらしようと隊服を着て外に出た。
蝶屋敷から出て山を下りる。
賑わう街でフラフラと歩く。
「……あ」
その途中で霞柱時透無一郎に会った。
「……Aさんだ」
「……!無一郎くん。名前覚えててくれてるの?」
訊ねるとこくりと頷く。
「……これからどこに行くの?」
「特にすることがないから散歩しようと思って」
「そう……藤の花の先を超えているから気をつけてね。夜になると鬼が出てくるから……刀がないと鬼の首は切れないからね」
「あぁ、鬼の苦手なものは藤の花だっけ……なるほど。分かったありがとう!」
手を振って去ろうと後ろを向くと、クイッと裾を引っ張られる。
「……僕もお散歩一緒に行ってもいい?」
「!もちろん!」
おいで、と手を振り隣を歩かせる。
「いい天気だね、えーと……」
「……無一郎でも、何でもいいよ……」
「じゃあ、むいくんで」
「!うん、じゃあ僕はAさんって呼ぶね」
分かったとにこりと微笑むと、恥ずかしそうに顔を俯かせる無一郎。
可愛いなぁと、頭をわしゃわしゃと撫でてしまった。
はっ、と我に返りごめんと謝るが、「いいよ」とだけ返ってきて機嫌を悪くしているようでは無さそうだった。
何も無い殺風景の平地をスタスタと歩く。照らす日がとても暖かい。
「ねぇ、Aさんはいつになったら刀作るの?」
「あーーー、分からないなぁ。全集中の呼吸覚えたばっかりだし……」
「……多分もうそろそろ自分の派生見つかると思うよ」
「……えっ!?」
「なんか、僕らと似た気があるもん。僕、なんでもすぐ忘れちゃうけど変なところ勘が鋭いから外れないと思うよ」
なるほど……。
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作者名:かふぇもか | 作成日時:2019年11月3日 15時