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なんて、なるはずなくて…
｢…本当に。今日いつもより練習厳しかっただけやから。試合も近いし。｣
｢そうか。無理はすんなよ。｣
そう俺の肩を叩いた兄は、またソファーに座り、スマホを手に取る。
通知を受けてその長い指でタップしたのは、唯一お気に入りに設定されたアイコン。
わざわざそんな設定しなくても毎日連絡取ってるから必然的に1番上に来るのに…
誰も悪くない。
目に入ってしまったハートマークが目の前をぐるぐるとまわる
きっと兄ちゃんは明日、いつもより少しだけ早く起きるだろう。
いつもより少しだけ長く髪をセットするだろう。
いつもより少しだけいい香りがするだろう。
いつもより少しだけ声が跳ねるだろう。
そして俺はいつもより少しだけテレビの音量を上げるだろう。
俺と兄ちゃんは同じ家に生まれて、
俺と違う道を歩む人。
好きになってはいけない人
今日も鍵を閉める
end.
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作者名：時音 | 作成日時：2021年2月15日 22時
