36話 ページ37
杏寿郎side
「…杏寿郎、し、死にそう」
ジェットコースターのセーフティーバーを下ろした途端に、俺の顔を見て泣きそうな表情で言った彼女。
その表情に焦りを覚える。
まずい！Aが泣きそうだ！！！
『ちょ…待ってくれ、どうする、係員を呼ぶか？』
慌てて彼女の頬に手を当て聞くと、Aは俺の服の袖を持ってふるふると首を横に振った。
「……のる…」
弱々しい声で呟いた。
……別に乗らなくても良かったのだが、彼女が「杏寿郎が乗りたいなら私も乗る」と言って聞かなかった。
変なところで頑固な人だ。
今俺の隣で泣きそうになりながら震えてるのと同じ人とは思えない。
「っあ、」
ゆっくりとジェットコースターは動き始めた。
小さな悲鳴とも取れるような声を発したA。
いや、今の声…色っぽいな…
なんてことを思いながら隣を見ると、Aは必死にセーフティーバーにしがみついていた。
黒いクッションに彼女の細い指が食い込んでいる。
『…A、大丈夫だ！いざとなったら俺が助ける！！！』
「…まず！…いざとならないでほしい…！！」
半ばキレかけの彼女が泣きそうな顔で俺を見た。
はっきり言ってAの泣きそうな顔が最高に可愛い。
こんなこと言ったら殴られるだろうな、と思いながら無表情で彼女の顔をじっと見つめていた。
「っねぇ！あと何秒で落ちる！？」
『すまんが分からん！！』
「…死ぬ…！」
『死なないさ！！！死なせない！！』
Aが騒ぎ出す。
俺の袖を掴み、涙を溜めた目で俺を見て言った。
「杏寿郎、今までありが」
その瞬間、体がふわっと浮くような感覚と勢いよく風を切る音が聞こえた。
きゃー！！と周りから歓声なのか悲鳴なのかわからない声がする。
「っ……………」
隣の彼女は意外にも何も言わずにただ前を見ていた。
絹のような黒い髪が風に靡く。
そして目にはなんの感情も浮かんでいない。虚無だ。
限界を突破したのかもしれない。
ゴキブリを目の前にした彼女も時々同じような目をする。
『…A、大丈夫か？』
時々彼女に声をかけたが、返事は一切返ってこない。おそらく聞こえてすらない。
ただ何かを悟ったような顔で何度も登って落ちてを繰り返した。
「……杏寿郎、立てないよ、ね、助けて」
『…本気か？』
「ほんとなんだって、やだ、もう恥ずかしい」
『まさか腰を抜かすとは！』
「おっきな声で言わないでよ！！」
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おさかなだいすき(プロフ) - さくらさん» コメントありがとうございます！！だいぶ前に頂いたコメントに返信すみません！そして長い間更新できずに申し訳ありません！読んでいただけて本当に嬉しいです！！ (2021年9月25日 21時) (
レス) id: cdd0af75bb (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - こんばんは！上がったり下がったりしながら夢主ちゃんにときめいている煉獄さん、お茶目でかわいらしいです！今夜も素敵な更新ありがとうございます！幸せな気持ちになりました！ (2021年7月3日 22時) (レス) id: 7c69c8f6ba (このIDを非表示/違反報告)
おさかなだいすき(プロフ) - さやさん» コメントありがとうございます！！！なかなか更新できず申し訳ありません！！今後ともどうぞよろしくお願い致します…！！！ (2021年7月3日 0時) (レス) id: cdd0af75bb (このIDを非表示/違反報告)
さや(プロフ) - コメント失礼しますm(_ _)mこの作品の煉獄さん可愛くて大好きです(*´∀｀*)！！お風呂の攻防戦のとこなんて、反省してない煉獄さんが可愛すぎて(*´Д｀)尊。次の更新を楽しみに読み返しに行ってきます＼(^^)／ (2021年6月11日 17時) (レス) id: 7025e10926 (このIDを非表示/違反報告)
おさかなだいすき(プロフ) - annkoさん» コメントありがとうございます！！！頑張ります！！！！ (2021年4月25日 7時) (レス) id: cdd0af75bb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おさかなだいすき | 作成日時：2021年1月29日 19時
