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33話 ページ34

『……杏寿郎が?』






千寿郎くんが息を切らして私の家を訪ねて来てくれた。


「兄上が、先の任務で、大怪我をしたと連絡が来ましたっ…

煉獄で少し容態を確認しに行きます。Aさん一緒に来ていただけますかっ…。」





返事をし、買い物で出ている母に書き置きを残して、慌てて家を飛び出した。





煉獄の皆さんに連れられてきたのは大きなお屋敷だった。


聞けば、しのぶちゃんのお屋敷で怪我をした人をここで治療しているらしい。






杏寿郎は一人、日当たりのいい窓際で布団の上に横たわっていた。



その手足には痛々しい包帯がいくつも巻かれている。




杏寿郎は私達の姿をみとめるとほんの少し口角を上げて微笑んだ。







杏寿郎のお父さんとお母さん、千寿郎くんは杏寿郎に近寄り、容態を確認した。






左腕の複雑骨折、両手指の粉砕骨折に右腕の圧挫傷。
両踵の打撲、左脚脹脛の腱断裂。
 


命にこそ関わらないが、
とても日常生活を送れるようなものではない。








杏寿郎のお父さんお母さん、千寿郎くんは杏寿郎に声をかけ、しのぶちゃんに話を聞くため、病室を後にした。
 





出ていく間際、杏寿郎のお母さんに
 
「Aさん、杏寿郎と一緒にいてあげて下さい。」

と声をかけられた。







私は頷き、杏寿郎の寝ている横まで近寄った。

杏寿郎は私を見て少し微笑んだ。




『…返事、しなくていいから聞いてね。



がんばったのね。




…っ…私、貴方がとても誇らしくて、素敵だなと思う。


もし…鬼に襲われそうで、杏寿郎が助けに来てくれたら凄く安心すると思う。









でもあなたのことを心配してる人、沢山いる。


こんなこと言うべきじゃないってわかってる…。わかってるよ







 

けど…!お願いだから。









自分のことも大切にしてっ……!!』




 
………馬鹿だな私。


こんなこと言っても仕方ない。






命を賭して人を守るのが彼の役目だから。
覚悟して任務にあたってる。



私にそんなことを言う権利はない。






 
なのになんで私泣いてるんだろう。


ほんと私、馬鹿じゃないの…………。






涙を流す私をみた杏寿郎は少し困ったように微笑み、



「…すまない。」
と深みのある声で私を包んだ。



 



私は今日、大切な人を失う怖さを初めて身近に感じた。






















涙が止まらなかった。

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抹茶タピオカ2号(プロフ) - ウ〜〜〜〜〜!?!?////ヤバイ吐血&鼻血が、止まらん!!((変態とても面白かったです( ≧∀≦)ノ (2020年4月4日 20時) (レス) id: 48661705e7 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶タピオカ2号(プロフ) - 千寿郎お母様にそっくりだー( ゚□゚)とても面白かったです( ≧∀≦)ノ (2020年4月4日 2時) (レス) id: 48661705e7 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶タピオカ2号(プロフ) - うわー!杏寿郎と夢主ちゃんが、大変なことになってる!\(゜ロ\)(/ロ゜)/とても面白かったです( ≧∀≦)ノ (2020年4月3日 21時) (レス) id: 48661705e7 (このIDを非表示/違反報告)
roro(プロフ) - 始めまして!めちゃめちゃ面白くて何回も読み返しました!更新楽しみにしてます!頑張ってください! (2020年4月3日 2時) (レス) id: 66099f3f1d (このIDを非表示/違反報告)
抹茶タピオカ2号(プロフ) - とても面白かったです( ≧∀≦)ノ (2020年4月3日 0時) (レス) id: 48661705e7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おさかなだいすき | 作成日時:2020年3月24日 15時

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