煉獄さんはむつかしい

29話 ページ30

あのー…ちょっとは痛がってもらっていいですかー。





なんでそんな平気そうなのよ。





「もっと本気で叩いてくれて良かったんだが！」

とか言ってるし。









それにしても
これだけ好き放題したんだったら流石に…




『…遊郭に行くのやめてくれない…？』

期待を込めてそう聞く。





「いや！絶対に君は行かせられない！

…今の反応を見てから尚更だな！



…………あと！
お願いだ‼胸元の衿を直してはくれないだろうか…‼」









尻すぼみにゴニョゴニョと顔を赤くして言う杏寿郎。







　
『いや、貴方がしたんですけどね？』


「俺が…っ！！…もっ申し訳ないっ！

だが少し…あの、そのままにされると別の問題が、生じてくると思われる…！！」






はぁ……さっきまでの強気はどうしたのさ…。

…うん。









……でも私も確信したんだよ！

絶対にあんな姿の杏寿郎、他の女の人に見せられないってね！！






衿を直し、杏寿郎に声をかける。



『杏寿郎。…ってなんで目つぶってんの？』


「……女性が衿を直しているところなんて俺は見ることができない！」





『…………さっきは脱がそうとしたのに？』

「っ！その節は本当に申し訳ない！」


頬を染める杏寿郎。





　




…………おもしろーい。(クソ)


『…杏寿郎。私やっぱり行くよ…』

というと、杏寿郎は顔をバッと上げて大声で言う。





「それは絶対に許さない！

先程の君の色気は俺が見てきた何よりも強かった！！


そんな君を遊郭に連れて行くなどっ…
………すまない。余計なことを言った！！」





私の顔を見て咄嗟に自分が何を言っているのか気づいたらしい。


………俺が見てきた何よりって…今まで一体何を見てきたのよ…。








『…私だってほんとは行きたくないよ…。
でも私のことばっかり言ってるけど、杏寿郎。

あなたさっきから自分がどんな格好してるか気づいてる…？』







今、杏寿郎はほんのり頬が赤くなり、
乱れた前髪を雑にかきあげて、

着流しの衿はガバッと空いてほとんど半裸状態だった。








それに気づいた杏寿郎は慌てて衿を掴み強引に直した。




『…杏寿郎。あなた、凄くかっこいいんだよ？知ってた？』




ぐっ……！と声を漏らす杏寿郎を無視して話す。






『ひょっとこのお面とか被ってるなら別だけど、そんなふうな格好で遊郭に行くなんて絶対にだめ。』





「……それだ！！」


『は？』

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