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舜太「え?」

仁人「なんと……」

一寸法師は、太智のその言葉で、少しうつむいておりました。

一寸「その通り。私の目は一寸先も見えないほど、光を通しません……」

太智「やっぱり……。ずっと不思議だったんだ。法師様は、おいらたちみたいに灯りを持ってないのに、どうやってこの鬼の腹の中を歩いてこれたのか」

仁人「確かに、言われてみれば……」

太智の言った通り、法師の手には、杖一本。
それ以外は何も持っていません。
行灯や松明でもない限り、こんな暗闇の中を歩くのは、例え目が見えていても不可能です。

舜太「じゃあどうやってここまで歩いてきたんだよ」

太智「それはたぶん、音だよ」

舜太「音?」

太智「法師様はきっと音を頼りに歩いてるんだよ。違います?」

一寸「……その通りです。この錫杖(しゃくじょう)の先の遊環(ゆかん)から出る音の反射で、自分の位置がある程度はわかるのです」

まるで闇を飛び回る蝙蝠(こうもり)のごとく、この一寸法師は錫杖から鳴る音を壁に反射させ、その音を聞いて自分の場所や障害物の位置を把握しているのです。

舜太「ふーん。まぁそんなのどうでもいいけど、それよりこの鬼だ!斬り続けたらどうにでもなるだろう!」

仁人「そんな力づくでは体力が持ちませんよ!何か別の手を考えないと……」

太智「……音……。鬼の腹の中……」

腕を組んで考える太智を後目に、舜太は岩肌の壁を何度も斬り付け始めていました。
斬っては治り、斬っては治りを繰り返す岩肌。
これではきりがありません。

舜太「くっそおおお!!」

太智「一か八か……。これでいこう!」

その時でした。
太智は組んでいた腕を解くと、何か思いついたのか手をポンと叩いておりました。

太智「法師様!お願いがあります!手を、いや、耳を貸してください!」

一寸「え?ええ、私でよければ……」


 

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作者名:milkssss | 作成日時:2020年7月13日 21時

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