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舜太「まさか、本当だったとは……」
佐野「……」
太智「きっとお前は、盗賊団を皆殺しにしたという日から、一切人を斬ってない。そうでしょ?」
佐野「……なぜ……そう思う……」
太智「お前の持ってる、その岩融だよ。
その刀の表面には、錆や刃こぼれが見て取れる。
刃こぼれに関しては、最近できたものみたいだけど、その錆びは違う。
それはかなり古いものだ。
ということは、その刀の手入れはほとんどされてない。
そして、刀の錆びる原因は、人を斬った時に付着する血液が酸化するからだ。
なのに、その錆び以外の錆びは全く見受けられない。
つまりその刀は、その錆びが付いて以降、人を斬っていないということになる。
それともう一つ。
お前はあの時、おいらたちを殺そうと思えばできたはずなのに、爆風で吹き飛ばしたり、そっちの棒で牽制したり、怪我を負わせるどころか、ただ気絶させるだけ。
動けなくするんだったら、斬ったって良かったはずなのに、わざわざ違う武器に持ち替えた。
刀の手入れもしないやつが、そんな手間なことするとは思えない。
確かにお前は強いけれど、せっかくの岩融の使い方がちぐはぐなのが、おいらには違和感でしかなかった。
そこでおいらは思ったんだ……。
お前は岩融の威力を見せつけて、おいらたちを動揺させてできるだけ自分から距離をとらせ、わざとおいらたちを斬らないように立ち回ったのだと。
だから、こっちからお前の間合いに入れば、きっとおいらを斬るのをためらって手を止める。
そして、見事においらの考えは当たったってわけさ。
本当なら拍手喝さいをもらいたいところだけど、仁人先生の毒はまだしばらく効くだろう。
その間に、お前が盗ってったものは全部返してもらうよ」
地面に散らばった防具や、太智たちの武器。
舜太も、ようやく自分の刀を取り戻すことができる。
そう思い、投げ出された刀に手を伸ばしたその時でした。
その刀は、駆けてきた仁人に、先に奪われたのです。
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作者名:milkssss | 作成日時:2020年7月13日 21時