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目を()らさなければ見えないような高い位置で、その誰かがこちらを見ているのです。

仁人「舜太殿!あそこ!」

舜太「誰だ?!」

「武器から手を放してよ。おいらは向こうの都に住む太智ってんだ。それよりお兄さんたち、見慣れない顔だね?」

太智と名乗った誰かは、薄い青い色の高そうな小袖を着ています。

太智「んん?そっちのお兄さん!その腰の刀、それ、どうしたんだい?」

すると、太智は木の枝に足を片方引っ掛けると、まるで蜘蛛のように逆さまに宙ぶらりんになって、舜太の腰の刀に興味を示したようでした。

仁人「何と身軽な……」

舜太「これ?これは俺が産まれた時に、一緒にあったものだそうだ。詳しくは知らない」

太智「へえ……」

そう言いながら、太智は二本の木と木の幹を蹴りながら、何とも身軽な身のこなしで舜太たちの前に降り立ったのでした。

太智「よっと!ねえ、それもっとよく見せてよ!」

舜太「な、何でだよ!」

太智「おいらにはわかる。その刀、かなりの業物(わざもの)だね。そんな代物中々見れないから、もっとよく見ておきたいんだよ。お願い!ね?!」

両手を合わせて懇願するこの太智と言う青年に、舜太はたじたじです。
こういう場合はどうすればいいのやら。
横目でちらっと助けを求めるように仁人を見てみると、彼は舜太にこっそりと耳打ちしました。

仁人「舜太殿、大切な物はみすみす他人に渡してはなりませんよ」

太智「何話してるの?ねえお願い!ちょっと見るだけ!お願いお願いお願いお願いお願いお願い!!」

舜太「んもーわかったよ!ちょっとだけだからな!」

仁人「舜太殿……」

呆れる仁人を後目に、あまりにしつこく迫って来る太智に根負けした舜太は仕方なく腰の刀を外して、目の前で手を合わせる太智に差し出したのでした。

太智「ありがとう……」

そう言って、太智は薄ら笑みを浮かべると、その刀を手にしました。
そして、鞘からゆっくりと刃を出して、その刀身をじっくりと見ている様です。

太智「これは……なんと素晴らしい……。おいら武具屋で商人しててね、今まで沢山の刀を見てきたけれど、これほどまでの業物はやっぱり見たことがない……。ねえ……もしかしてこの刀、"鬼を斬ったりできる"?」
 

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作者名:milkssss | 作成日時:2020年7月12日 18時

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