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余程慌てて帰ってきたのかスーツのジャケットとシャツがよれ、ネクタイも緩々になっている。
手には買い物袋を持っており、ちゃっかり食材も買ってきている事が見て取れた。
「あっ、おかえりなさい」
珍しい乱れた姿に戸惑いながらも言葉を発すると、ギロリと鋭い視線と交わってちょっと驚く。
ピりついた気配を感じていると、零はその場に荷物を置いてズカズカとソファに座るAに近寄り、ガバリと抱きしめた。
突然の包囲に視界が零で埋まる。
ギュッと苦しい位力強く抱きしめられるが、Aはこのハグが好きだった。力の分、それだけ大事に思われているような、そんな気がするのだ。
そうなればAも負けていられない。大きくて広い零の背中に腕を回して力いっぱい抱きしめる。
「……おかえり」
「ただいま」
少しして呟いた零の言葉に、ゆっくりと返す。
心細かったのはAだけでは無かったようだ。
久しぶりの零の匂いにホッとする。お風呂もあまり入れてないのかいつもよりも強い零の匂いを胸いっぱいに吸い込む。
「…何もしてやれなくてすまない」
「……ご飯持ってきてくれた」
あれ、嬉しかった。
そう言うと抱きしめる力が更に強まった。ちょっと流石に苦しい。
「痛かっただろう、怖かったよな」
「…」
まるで零が痛いような、怖かったような、そんな声に言葉が詰まる。
よほど心配を掛けていたらしい。
後ろに回した手で零の背中を擦りながらどうすれば零を安心させられるか考える。
「……でも」
あんなに痛かったのは腕を刺された時もそうだったし、ジンに睨まれるのはこれで何回目だっただろうか。
傷はもう治ったし、研究所の人達に色々されるのも……
「慣れてき」
「駄目だ!!」
ガッと両肩を掴まれて肩が跳ねた。
至近距離で険しい顔をして見つめる零にどうしていいか分からなくなる。
安心させようと思ったのだが駄目だったのだろうか。
そんな困惑したAの反応に今度は苦痛な表情をした零は、再度抱きしめ直す。
「……頼むから、
頼むから慣れたなんて言わないでくれ……」
「っ」
零の震えた声が耳元で聞こえ、息を呑む。
……そうか、これは普通じゃないんだ。
撃たれるのも、銃を向けられるのも、医者でもない人に良く分からない液体を腕に通されるのも。
普通じゃ、あり得ないんだ。
自分が思っていたより組織に染められていて驚いた。
それと同時に、先程の発言の不味さに気づきサッと青ざめる。
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momoryu(プロフ) - ふゆなさんコメントありがとうございます♡そう言っていただけてとても嬉しいです!!更新はゆっくりですがこうして見てくださる方の為に頑張って続けていきますね🥰 (2022年6月20日 16時) (レス) id: 0d68fcd700 (このIDを非表示/違反報告)
ふゆな(プロフ) - これからも頑張ってください!!!応援してます👊🏻🤍 (2022年6月15日 0時) (レス) id: 676d8245fd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:momoryu | 作成日時:2022年6月13日 11時