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☆《モトキ》散髪 ページ10

※モトキside


「…ふぁ…ぁ…ぁーねむ」


日曜の昼下がり

自室の窓際に置いてある大型のソファ

そこから見えるのは

雨の降る灰色の空。


「よく降る雨だ」


ここ何日間、そろそろ1週間だろうか。

小雨のような

じれったい天気が続いている。

特にやらねばならない事も

やりたい事もなく

軍団で集まる時刻までの

どうしようも無い時を

だらだらと消費していた。

意味もなく読んでいた若者向けの雑誌は

【梅雨を爽やかに!!ショート女子特集!】

と、文字通り"爽やか"な文面が

見開きを締めていた。

そのページを見て気が付いたが


「あ、これレディース向けだったのね」


だらだらと半分近く読んだはずなのに

全然気が付かなかった。

道理でなかなか男が出てこないわけである。

読む理由の無くなった雑誌を床に落とした。


「うー…ん…肩いた…」


ぐーっと伸びをして

ぐぃーっと後ろに反ったら

後ろの棚の上の水槽(ウーパールーパー♂)と


「あ、」

「あ?」


この家に入れた覚えのない彼女の姿が

逆さに見えた。


「あー…え、どうやって入った」

「あいかぎ」

「作った覚えもないよ」

「つくった」

「まじか」


すごいでしょ、



謎のドヤ顔で問題発言を言い放った彼女は

驚きで反りっぱなしの俺を無視して

持ってきていた大きな紙袋を

逆さまにした。

どさどさと大きな音を立てて

中の荷物が床に散乱する。


「何するつもり?」

「ぶるーしーと」

「質問に答えろし」


ぶぁさっ

と、広げられたブルーシートは

先ほど投げ捨てた雑誌を下敷に

それ以外何もなかった空間を

一瞬にして埋め尽くした。

その真ん中に背の高い椅子を設置し

銀色の鋏を手にして

俺の横に座った。


「いや、椅子用意したなら座りなよ」

「ソファがすきなの」

「じゃぁ何故用意した」

「ねぇ髪切って」

「は?」


唐突に無茶な事を言い出した彼女は

平然とした顔で鋏を俺に差し出した。


「…は?」

「髪切って」

「誰の」

「私の」

「失恋でもした?」

「私いつモトキに振られた?」

「確かに」

「器用でしょ、はい。」


どうぞ、



俺の手に鋏を押し付けた。

ひやりとした感触が手に広がる。


「…そういう動画?」

「ううん」

「せめて理由だけでも」

「あつい」

「三文字!」


鋏を押し付けた彼女は

既に椅子でスタンバっていた。

はやく、



甘えた顔で急かす。


「あー、もう」


仕方なく

重たい腰を持ち上げた。

☆《モトキ》散髪侠←《ぺけたん》看病



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林檎 - 長文失礼しました。更新頑張ってください! (2016年7月27日 23時) (レス) id: 8eb33a0bf7 (このIDを非表示/違反報告)
林檎 - 面白かったです!余談ですが、風邪を引いたときにウィダーインゼリー飲む人ですか?ぺけたんの話を見ていたら、出てきたので・・・私はお粥があまり好きではないので、ずっとウィダー飲んでいますw (2016年7月27日 23時) (レス) id: 8eb33a0bf7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:HERMÈS | 作成日時:2016年6月26日 16時

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