お転婆お姫さまと桃鬼さんの珍道中【桃】二

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「いいよいいよ〜。俺、良い男知ってんのよ〜。背は高くて顔面最強で、ちょっとお馬鹿さんだけどそこが可愛い〜ってお姉様方にはすっごい人気！」


人気という言葉に反応して、私たちは顔を見合わせてニヤリと内心笑った。
危ない、危ない。顔に出ないようにしなきゃ。


「ああ、でもぉ。私たち実はここだけの話で、恋仲なの。だけど男も知りたいわよねぇって事で初めて来たんだけど、」


勝手にぽんぽん設定を考えて、私を抱き寄せて上目遣いで男を見るとニヤニヤと見下ろされて、うーん居心地良くない。

だけど私たちが離れずに潜入するには、佐久間さまに乗っかておく方がいいんだろうなぁ。



「そりゃあ良いじゃない。是非ともお兄さんも混ざりたいくらいだけど。ふふふ、良しうち一番の男を紹介するよ」


着いておいで、となんとか上手く行った？


踵を返した男はコランコロンと下駄を鳴らしながらルンルンと鼻歌を唄う。



「……佐久間さま、大丈夫ですかね？」

「大丈夫。 Aの事は絶対守るから」


そういうことじゃないんだけど。
でもギュッと握ってくれた手があまりにもあたたかくて、このまま二人でどこかに消えてしまいたいと思ってしまった。

駄目だ。らうるを助けてあげなきゃ！

それで三人で村へ帰って、またのんびり暮らそう。

そのためには、もう一度気を引き締めていかなきゃね。




「さあ、どうぞ」


どう見ても普通の茶屋なんだけど、男は店番をしていた男に目配せすると、その男は更に奥へと続く扉をそっと開けた。

足下気をつけてね、と優しく微笑むハット帽のこの男。本当に信用できるのかまだ不安だなぁ。




「お嬢さん方ついてるねぇ。いつもなら人気で直ぐに相手出来ないけど、今日はたまたま空いてたみたいでさ」

「へえ、そうなの。そんなに良い男なんだ？」



クンクンと鼻を鳴らし、妖怪の気配を探ってるのか少し女言葉が疎かになっている。
こういうとこ抜けてるよねって。



「うん、良い男。今日で男の良さを覚えて帰りな〜。 ほら先にお嬢さんお入りよ」


え、私？

手を差し出されて、それが普通なのかと思って何も気にせず手に手を乗せる。すると、グイッと扉を開けたと同時に部屋の中へ押し込まれ、


「…っきゃっ！？」

「Aっ」



バタンと、扉が閉じる瞬間、その男はニコッと笑っていたけど目は全く笑っていなかった。





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