お転婆お姫さまと桃鬼さんの珍道中【桃】

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「めめー、めめー！？」

「おー、なに？」



雑木林を抜けた先にある畑で野菜達をくすねてきた。

薪割りをしていた めめ は、額の汗を手拭いで拭いながら籠いっぱいの野菜を見せつける俺を見て何故か苦しそうに笑った。



「らうるが此処へ来てもう二年も経つな。その間にお前ぐんと背は伸びるし、その分手足が長ぇから逃げ足も速い。だから向いてたっちゃ向いてたんだな」


此処ではそれぞれ仕事を見つけないと暮らしていけない。

金を払って買われて、そこでは俺たちは上里様のために貢物をする。

食べ物を盗んだり、金を奪ったり。

道端で物乞いをしたり。

二年前の幼かった俺は、汚らしく痩せ細った格好で毎日物乞いをしていた。


背がデカくなりだしてからは、めめ に盗み方を教わった。


俺はすばしっこくて、こっちの方が性分にあっていたらしく物乞いは直ぐに辞めて盗み専門になったんだけど、その頃からかな めめ が俺が物を持って帰ってくる度に悲しそうに笑うようになったのは。




「めめのおかげだよ！ めめが居なかったら俺、絶対生きてない自信ある！」

「ふはっ、ンなとこに自信もつなって」



新鮮なトマトを胸元でキュッと拭いて、ガブッと噛み付く。


「んまっ」と、キラキラ目を輝かせて、わしゃわしゃと俺の頭を撫でてくれる。この瞬間がマジで好き。


俺は父ちゃんや母ちゃんに愛されてたと思う。

思うけど、金に困って売られた。


愛されていた記憶があったからこそ、最初の此処での暮らしは辛くて悲しくて、毎日泣いてたんだ。

そんな俺に毎日話しかけてくれて、自分の分の飯を分け与えてくれて、生き方の全てを教えてくれた。


なんで めめ だけはそんなに優しくしてくれるのか聞いた事がある。



『弟が居たんだ。お前より全然年上だけど、なんか雰囲気が似てるつうか』


幼い頃、俺と同じように買われた めめ は弟と一緒だったらしい。

俺なんかよりもっと大変な環境で二人で身を寄せあって必死で生きてきたけど、ある日弟は盗みでしくじって大怪我をしてそれっきり寝たきりになった。

めめ はそれでも良かったんだって。

生きる意味がわからなかったけど、弟を生かすためなら嫌で辛い事もなんでもやってこれたって。



だけどある日 めめ が家に帰ると弟の寝床はもぬけの殻だったらしい。


周りの人に聞いてみても、誰もが口を揃えて言う「知らない方がいい」と。




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