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「おら、さっさと歩け坊主」
背中を蹴られ、数日何も口にしていない僕はよろよろと足が縺れた。
ドサッと地に倒れ込んで、あーあまた怒られるなって恐怖に体がすくみそうになるけど、でもなんかもうどうでもいいかもって空を見上げた。
「なに寝てやがっ……」
「そいつ新入り?」
「あ、目黒か。ああ、一昨日上里様から世話をやいてやれって任された」
「ふうん。なに手こずってんの?」
「いやなんつうかこいつ、目が怖いんだよ。色が日本人と違うからさ」
「……へえ、だったら俺にくんない?」
「え、まじで? 別に俺はかまわねえけど」
「じゃあ決まり。上里様には俺から話しておくわ」
なんだろう。
僕の知らぬところで何か取引されてる気分になる。
僕は物じゃないのに、くれとかやるとか。
バシッと顔に水がかけられて、「わっぶっ!」と、慌てて起き上がった。
すると目の前には僕がこれまでに見た人の中で一番綺麗な顔だと思う男が僕を見下ろしてて、
「起きな。腹、減ってんだろ?」
「…………」
桶を抱えてボロい家の方へ歩いて行く男の後ろ姿をボケっと見つめていれば、立ち止まって振り向いて「早く!」と、ドスの効いた声にビクッとなった。
「ま、待ってよっ」
「いいか。ここにはお前みてぇに売られてきたガキなんていっぱい居る。食いっぱぐれたら、それは死を意味するんだ。わかる?」
うんうんと頷く。
それに気を良くしたのか、目黒と呼ばれていた男は初めてニッと口角を上げて笑いながら僕の頭をグリグリとした。
え、痛いよ。
「俺は目黒。目黒蓮、お前は?」
「僕は……らうる」
あまり名前は言いたくなかった。
だって僕はこの辺では珍しがられ、あまり良くは思われない異国の血が混ざった子供だから。
「いい名前じゃん。でもそれだと目立つな」
「う、うん」
「よし! お前は今日から、俺と居る時以外は猿吉って名乗れ。俺の前ではらうるのままで居ればいいから」
目黒蓮は、僕に此処での名をくれた。
まだ六歳で身売りされた僕にとって、この目黒蓮という存在はこの後とても大きなものになっていった。
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ゆきんこ(プロフ) - あいちゅんさん» 長くなりましたので、2回にわけてのお返事失礼します。楽しみにしていただいてるようなのに、ご期待に添えずに申し訳ありません(>_<) 裏は載せられませんが、それ以外でも楽しんでもらえるように頑張ります! (2020年12月13日 10時) (レス) id: 47adab0070 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - あいちゅんさん» あいちゅん様、大ファンなんて嬉しいお言葉に舞踊っております!ありがとうございます!初夜のお話についてですが、その他の裏のお話しに関しても書き始め当初から制限できるTwitterのみ掲載すると決めておりまして、本番行為はこちらには載せられません(汗) (2020年12月13日 10時) (レス) id: 47adab0070 (このIDを非表示/違反報告)
あいちゅん(プロフ) - はじめまして。ゆきんこさんの作品大ファンの者です。お願いがあるのですが、私はTwitterのアカウントを持っていないので初夜のお話が楽しめません>_<privatterではなく普通の投稿にしていただけないでしょうか…? (2020年12月13日 4時) (レス) id: bf15d374dc (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - 祐莉さん» 照くんや、残りの二人がどのように登場するかも楽しみに待っていてください(^^)最後まで面白かったと言ってもらえるように頑張ります! (2020年12月3日 12時) (レス) id: 83fde2196b (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - 祐莉さん» そうですね。新章では、前回活躍してくれた二人は出てこないのですが、その代わりに前半に少し登場した翔太くんたちが出ます(笑)なのでまた違った雰囲気を楽しんでもらえたらいいんですが! (2020年12月3日 12時) (レス) id: 83fde2196b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆきんこ | 作成日時:2020年12月1日 17時