松下物語 ページ11
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はてさてそんな近くて遠い2人ですが、
始まりはそう…10年程前でしょうか、ある所に『松下村塾』という学び舎がありまして、そこにはお金が無くて文字が読めない農民の子供などが行っておりました。
そこで文字や剣術を教えてるのが、吉田松陽という男だったのです。
塾が出来るまで、彼は1人の女の子と暮らしていたそうです。
茶色っけのある長い髪をした無口な女の子だったそうで。名は…
「A、何をしているのですか」
「…」
A、そう呼ばれる少女はチラリと松陽を見て、また縁側に視線を元に戻します。松陽も返事がないのは慣れたように、隣に座ってAの見ているものを見あげました。
「ああ、ザクロですか。もうそんな季節ですね」
暑い夏も少しずつ、終わりを知らせ秋が始まろうとしているのか。としみじみ思っていれば
「…ザクロって何」
と小さくAは言いました。反応してくれたのが嬉しくて松陽は1つもぎ取ってみましょうかと立ち上がります。
「ザクロとは木になる果物ですよ。秋が旬と言われてて、割ってみると…ほら」
割ったザクロを覗きこんだAは「血の色だ」と言いました。
「“赤”色ですよ。見てください、1粒1粒がまるで宝石のようだ」
「…食べれるの?」
「ええ。食べてみましょうか」
どうぞ、と言われてわたされた実を被りつきます。次の瞬間、口を窄めて悶えだしました。
「…〜ッ!!」
「ははっ!酸っぱかったですか〜
まだ熟れてなかったんでしょうね」
悶えるAは可笑しそうに笑う松陽をギロリと睨みますが、口の酸味が無くなると
「…食べれるって、知らなかった。」
そして、不味かったけど、と付け足すと
「オジキが、その木に水をやってるのをいつも見てた。けど何をしてるのか分からなくて…でもそういう時はいつも私を呼ぶから、覚えてた。」
「…」
「写真を渡されて、“月が消える前にこいつを消してこい”って…」
もういいですよ、という松陽の顔は悲しみに溢れていました。
「あなたは今までそれしか知らなかったから、そうやらざるを得なかったんでしょう。
でも今は違う。あれはザクロで、実の中は赤くて、酸っぱい。
そう、今あなたはザクロを知ったんです。少しずつでいい、あのザクロのように、世界を知っていけばきっと今見えてる景色も変わるはずですよ」
そう言ってAの頭を撫でました。
それからでしょうか?
無口だった彼女は少しずつ、口を開き出したのは…
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あいうえお - 更新待っていました!!ありがとうございます!!これからもお身体に気をつけて頑張ってください! (2023年3月21日 4時) (レス) @page1 id: 138a1201b5 (このIDを非表示/違反報告)
ロゼ(プロフ) - 久しぶりの更新嬉しいです❤️この作品とても大好きです、応援しております🫶🏻 (2023年2月1日 23時) (レス) id: a0125a0dc0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - うわあ、、めっちゃよかったです!!更新まってます (2022年8月10日 18時) (レス) @page33 id: f0d2a098e4 (このIDを非表示/違反報告)
rairis - 「出会い」のところにチセという名前があるのですが…… (2022年8月6日 2時) (レス) @page12 id: 7e61cd56ff (このIDを非表示/違反報告)
sou(プロフ) - ピピミさんの降谷さん作品が好きすぎて飛んできました!銀さんの作品でこんなにものめり込んだの初めてです!素敵な作品をありがとうございました!! (2022年3月29日 0時) (レス) @page33 id: 26a665cc7a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピミ | 作成日時:2018年9月22日 9時