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「彼女、強いんですね」

と風見が言う。
俺も、ああ、と言った_____








じゃあなんで今、彼女は泣いているんだ?



いつだったか、家に誰もいなくて寂しくないかとAさんに聞いたことがある。



「寂しくないんですか?」

「…寂しいですよ」

少し困った笑い方をしながら、クルクルとカフェラテの氷を回す。

「でも、学校に行けば蘭ちゃんと園子ちゃんが居るし」



それに…と、付け足すAさん


「それに…?」

「…い、今だって、安室さんいますし」

「Aさん…」

「あー!もう!だから言いたくなかったのに!!」


あの時はその言葉に舞い上がってしまったせいで、ちゃんとAさんのことを考えてなかった。


多分どこかで、彼女は強いと勘違いしていたんだ。







「…あ、あれ?」

俺に言われて初めて自分が泣いてることに気づいたんだろう。


「あれ、なんで…泣くつもりなんて、なかったんですけど…っ、」



そう言って何度も涙を拭おうとする。



そうだ。

この年頃の女の子が、
強いわけがない。


本当は怖かったんだろう。
本当は、期待してたんだろう。


彼女のご両親から発せられた言葉は、とても親が子供にいう言葉とは思えない。

そうしていつも、裏切られてきたんだろう。
その度に1人でぐっと我慢してたんだ。

ずっと、1人で…



そう思うと胸が苦しくなった。
あんな体験をして怖くないわけがない。
あんなこと言われて、辛くないわけがない。


「怖かったら泣いてもいいんですよ」

そう言うと、Aさんは首を降る。


「ちが、ちがうんですっ、これは、別に怖くなんて…っ、」

「Aさん」


それ以上目をこすったら赤くなる、というつもりで腕を掴んだ。

抑える手が無くなって、ハラハラととめどなく流れ落ちる涙。
その瞳に、ゆらゆらと焦っている自分の顔が見えた。


「ふ、うぅ…もう、帰りたい…」

「…では僕が家に、」

「ちがう!!」


Aさんから大きな声が出てびっくりした。
そしてもう一度、違うんですと小さな声で言う。



「もう、帰れない…ウチに、かえりたい。みんなに、みんなに会いたい…っ、」







_____みんなに、会いたい_____





気づけば彼女を抱きしめていた。
しゃくりあげる度に震える肩…


なんて小さな背中なんだ…
きつく抱きしめたら、壊れそうだ。

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理那(プロフ) - あぁ!そういうことでしたか!私よく絵を描くので知ってて!実際あんま覚えてなかったのでよかったです! (2020年5月22日 0時) (レス) id: db0db57d74 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぴみ(プロフ) - 理那さん» ご指摘ありがとうございます!!すみません、自分単行本派なので赤井さんの目の色すっかり勘違いしてました(号泣)訂正したのでまたよろしくお願いします! (2020年5月21日 23時) (レス) id: bf70a421f2 (このIDを非表示/違反報告)
理那(プロフ) - 赤井さんって目は黒じゃなくて緑色、だった気がする?いやすみません間違ってたら!無理のない程度に頑張って下さい! (2020年5月21日 21時) (レス) id: db0db57d74 (このIDを非表示/違反報告)
イアデビル(プロフ) - めっちゃ好きです!更新頑張ってください!応援してます! (2020年5月6日 3時) (レス) id: ef5404f845 (このIDを非表示/違反報告)
腐夢(プロフ) - 初めまして!番外編も本編もとても面白くてにやけながら読みました!読みやすいし感情移入しやすいのでとても読んでいて楽しかったです。素敵な作品をありがとうございます┏○))ペコリ (2020年4月29日 23時) (レス) id: 93d427ce7f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ピピミ | 作成日時:2018年7月6日 14時

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