其の愛は、秘めてこそ美しい、二 ページ2
「〜って訳よ、中也さんっ! なーんであんなに冷たいのかなぁ? 私、なにか悪いことした?」
「……いや、そんなことねぇだろ」
クレープをぱくり、口に頬張る。苺の甘い味とクリームのふわふわした食感がほんのり残る。べたべたした手で即に最後の一口を食べ終わってしまったそれのゴミを、綺麗に四つ折りに畳んだ。
中也さんというのは、太宰の相棒のことである。古くからマフィアに居る私は中也さんと友人歴が長い。そういや、そんな私なのに、秘書になるまで太宰を知らなかったのは不思議だな。
我が友、中也さんは気まずそうに目を逸らしたまま。
「ねぇ、太宰の愚痴を言う時って、中也さん必ず目をそらすよね。若しかして陰口言われてる太宰が可哀想になった?」
「はぁ? んな訳ねぇよ。俺が彼奴のこと嫌いなのは手前もわかってるくせに、聞くな」
「そうだね〜。愚問だったよ」
嘘。悲しいようなやるせないような表情を見せといて、それはないだろう。嫌いだからとかそんな簡単なことじゃなくて、もっと深いことを中也さんは思っている。それが何かは、わからないけれど。
潮風が二人の間を通り過ぎていく。花壇に腰掛け、クレープを呑気に食べているには今日は寒すぎた。
「そろそろ帰ろうよ。日が沈む」
「わーったよ。 たっく、振り回される身にもなれってもんだ」
「とか言って、いっつも付き合ってくれるから好き」
「なっ……す、すっ⁉」と顔を朱に染めて狼狽える中也さん。この女子力が欲しいなぁ。ゆっくり立ち上がり、中也さんに微笑みかけた。
夕日が彼らを柔らかく包み込んでいた。
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作者名:萩原りお | 作成日時:2017年4月29日 20時