じゅうさん ページ13
「ポ、ポポポムフィオーレに!?転寮!?!?」
目を丸くして、魚のように(魚だけど)口をはくはく開け閉めするアズール。
しばらくそんな驚き顔と見つめあって、5分、10分…、ぽす、アズールが脱力するようにへたり込んだ。
今まで見たことないパターンだ、なんてふざけたことを思いながらアズールを覗き込んでみる。
あ、これは…、昔間違えてアズールを置いて帰ってしまいそうになった時の顔だ。
「あ、アズール?」
「…やだ」
「え?」
「やだ!」
突然、わっと涙を溢れさせながら、アズールが私の膝に縋り付いた。
昔から泣き虫だったけど、こんなにも泣くアズールは初めてで。そのとき、とんでもなく悪いことをしてしまった、とはたとそう思った。
「ちがう、違うから。転寮なんてしないから」
なんだか私まで涙が出てきて、思わず、アズールのふわふわしてやがる頭をぎゅと抱いた。
今の停滞している自分の状況が嫌だった。嫌だったから、転寮くらいすれば、何か変わるんじゃないか、そんなゆるりとした考えでいた私が馬鹿だった。
まさか、親友をこんなに悲しませてしまうなんて。
ごめんね、いやです、わあわあ、2人で幼児のように泣いていたら、ガチャリ、ついに双子が部屋に突入してきたりなんかして!
最初は驚きで固まっていた2人だったが、少し経つと死ぬほど爆笑し始めて気付いたらメチャクチャ写真撮ってた。
パパラッチに追われるセレブリティの気持ちが、分かった。
そんなこんなで私の気持ちと経緯を泣きながら説明して、日付も変わりかけた頃。
ようやっと落ち着いたアズールは双子を両脇にベッドに座り、私に対してマフィア然とした態度でこう宣言した。
「シレーヌを、保護下に、おきます。」
「ほごか…」
「そんな、皆んなに置いて行かれたみたいで寂しいなんて、青春漫画みたいな悩み。僕たちがなんとかしてやります。そうですね、お前たち」
「もちろんです。ほんとに、シレーヌはすぐ1人で悩むんですから」
「そおだよ〜。オレらといないからそんな嫌〜な気持ちになんだよ」
そう、なんだ?そうなのかも?
ズビズビ鼻水を啜りながら、なんとか頷く。
そんな私を見て安心したように口の端を緩めたアズールは、深く息を吐いてベッドに倒れ込んだ。
「転寮は、しないんですね」
「うん」
「よかっ、た…」
すや。そんな擬音がピッタリな、安らかな入眠。
フロイドが吹き出して、次いでジェイド。そして私。しばらくの間、笑いが部屋に溢れていた。
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作者名:ほこり | 作成日時:2020年12月23日 2時