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始まりの握手 ページ3

「今すぐ返した方が…いいのかなぁ、」

孤爪研磨と書かれた名札を睨みながら唸るAだが
今すぐでなくても大丈夫だろう、と後で返すことにした。


ゾロゾロと教室に入ってくるクラスメイト達。
「おはよう」と声をかけてくれる子もいて純粋に嬉しかった。
なんにせよ転校生という身分である為、完全に馴染みきれている訳では無いのだ。


一通り授業が終わった放課後、
Aは男子バレーボール部の体育館に向かっていた。
ホームルーム後、すぐに名札を返そうとしたが
目が合った途端すぐに逃げられてしまった。


(ものすっごい警戒されてんな…私。どうしよ。)


そんなことをぼやいたAは少し自嘲気味に空を仰いだ。





「こづめけんま、け…んま、研磨…。孤爪くん。研磨くん。」

コツコツと自分の足音が響く誰もいない廊下で一人呟くA。

今度こそ自然に、と意気込んたAは名札の持ち主に
どうやって話しかけようか悩んでいた。

(いきなり名前呼びはちょっときついよね…)


「うーん、どうしよ!笑」





初対面の時の印象があまり良くなさげな感じだったというのも
ある為、Aはどう彼に誤解されないか考える。

でもひとつ気になることがあった。

(あれ、私なんで孤爪くんのことこんなに気にしてるんだろ。)


確かにAは初対面の印象を大切にしたいと思う性格の人ではあるが
ここまで気にしているとなると話は別だ。
授業中もずっと気になってたし、昼休みの時も自然と目で追っていた。



……



(なんなんだろう、この気持ち、。)


Aは少し心に蟠りを残したまま体育館へと向かう足を早める。

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作者名:百。 | 作成日時:2020年7月5日 18時

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