むいくん、思い出してよ…。(時透無一郎)

記憶7 ページ8

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御館様はあぁ仰ってたけど、記憶を取り戻すことは、彼にとって本当にいいことなんだろうか…。


大切な両親を失い、唯一残った双子の兄が鬼に食われたら、誰だって悲しくてそんな過去消し去ってしまいたくなるだろう。

そんな辛い出来事を思い出すくらいなら、いっそ忘れてたほうが幸せなんじゃないのか。


私はそんな風に思っていた。


だけどそれと同時に、過去には辛いことだけじゃなくて、楽しかったこともたくさんあるはずだ。実際私にとっても、むいくんとゆうくんと過ごした時間は今でも大切な宝物だ。

そんな楽しくて沢山皆で笑った日々の思い出を忘れてしまったら、もっと辛くて悲しいんじゃないか。寂しいけれど、私のことは思い出してくれなくてもいい、だけど私は何より、両親やゆうくんのことを忘れたままでいてほしくなかった。


感情を取り戻せば、これから先の毎日が、彼にとって楽しかったり、もちろん悲しいこともあるかもしれないけれど、もっと華やかになるのではないか。

私との他愛もないふとした会話の中で、彼が記憶や感情を取り戻すきっかけを作ってあげたい。


私達の関係だってまた0から始めればいいのだ。




私はそんな風に考え、明日からまたむいくんに話しかけてみることにした。


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