-蝶は水面月で羽を癒す-

＃６ ページ6

あれから…あの晩から毎日、あの場所に行った


＿しのぶ｢今日もいない…か……｣


それまで、何も予定のない夜は他に気を取られる事も無く勉強に集中できていたのに…

月明かりを見上げていると、どうしてもその人の顔がチラついて仕方なくて


…こんな風に、何かが気になって勉強が手に付かなくなるなんて初めてで
どうしてこんなにも気になるのかも分からない

だけど………

しのぶ｢…｣ｼﾞｯ

義勇｢…？｣

この人の事を、もっと知りたいと思ってしまう

でも、貴方の事が気になって勉強も手に付かなかった…なんて

一度会ったきりの相手にここまで感情を乱されてる事が自分でも馬鹿らしく思えて、口が裂けたって言いたくはない

しのぶ｢お時間取らせてしまい すみませんでした

また授業でもお世話になると思いますので、その際は宜しくお願いします。今日はこれで失礼します｣

これ以上この人と話していたら、自分の口からどんな思いもよらぬ言葉が出てくるか分からないと思い
軽く会釈をして足早にその場を立ち去ろうとした

義勇｢…待て｣

しのぶ｢…？｣

背を向けて歩き出した途端、冨岡先生が声をかけて来て 何かと思い振り返ると

義勇｢気を付けて帰るんだぞ…また明日｣

しのぶ｢……はい、また明日｣

変わらず無表情のままだけど、気の所為か目元は優しく見えて…


ﾄｸﾝ…ｯ

しのぶ｢…｣

…ん？今何か胸の当たりがきゅっとしたような…




それから数日が過ぎ、新クラスでの生活も大分慣れてきた頃

しのぶ｢失礼します。冨岡先生いらっしゃいますか？｣

天元｢冨岡か、今呼んでやるよ。おーい冨岡〜！｣

私は体育委員に任命され、委員の仕事の度に職員室などに冨岡先生を訪ねるようになっていた

義勇｢何か用か｣

しのぶ｢体育祭についての資料と準備リストです

うちのクラスが担当だったので、整理して渡しに来ました

後、冨岡先生は今回が初めての体育祭なので
過去五年分程の体育祭の報告資料も纏めて持って来ました｣

義勇｢すまない、助かる。ついでに体育資料室に頼みたい書類があるので来てもらってもいいか｣

しのぶ｢わかりました｣

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