お兄ちゃんと妹 3 【白布賢二郎】

妹と相手 ページ27

　
　
　
　
｢入射角の角度は必ず…＿＿｣






いつもなら頭に定着するはずの教師の言葉は




今日は右から左に流れていった




理由は分かっている




【……絶対、奪ってやるから】




さっきの鋭さは見事に消えて




眠気とただ戦っているだけの




隣に座ってるコイツの言葉のせいだ




奪うという言葉の使い方が合っていない気がする




血の繋がりはどうしようも無いし




妹(アイツ)の兄という立場を奪うと言うなら




お互いの家族の誰かが結婚なりして




理論上で家族になる他ない




けど、それにしては態度がおかしいだろう




睨む必要が無い




こんなくだらない事で




頭がいっぱいになるのは慣れていない




そのせいだろうか




手元には5回も折れたシャー芯の屑




カチカチとシャーペンの頭を押しても




芯が出てこなくなったので




筆箱からシャー芯の替えを取り出して




シャーペンにセットする




すると手元からシャー芯のケースが奪われた




もちろん奪ったのは






｢………おい、人のモン勝手に取んなよ｣




｢俺もシャー芯なくなったの!貸して!｣




｢自分の使えよ｣




｢俺が持ってるわけないじゃん｣




｢……はぁ｣






別にシャー芯1本くらい構わないか、と




放置していたら




ケースと共に1枚のメモが返ってきた




ただのゴミを押し付けてきたとは思えず




中を覗けば




6度目のシャー芯が折れる音がした









【さっきの手紙、お前の彼女に渡しといて】

【Aちゃん、ね】
　
　
　
　
　
　
　

妹と部活→←妹と睨み

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す