ぱーと 39 ページ39
長い廊下を加賀と二人で歩いていた。
だけど、俺も加賀も話しかけることが出来ずに無言だった。
今がチャンスの二人きりだったのに。
気がついた時にはもう保健室の前に着いていた。
「早く入れよ…」
目線も合わせずに加賀は素っ気なく俺にそう言った。
俺が保健室の扉を開けると、保険医がニッコリ微笑んだ。
「まあ、どうしたの?加賀くんに…えっと…蓮…くんかしら?」
保険医が迷ったような声色を出し、俺の方をマジマジと見た。
それで出した結果が蓮だった。
「先生、Aですよ」
予想外に加賀がすぐさま答えた。
さっきまで無言で何も言わなかったのに、加賀の目は真っ直ぐ保険医を見ていた。
「あら、Aくんだったの…ごめんなさいね」
申し訳なさそうな表情を浮かべた後、俺と加賀を交互に見つめた。
「あなた達、何処か怪我したの?具合が悪いの?」
保険医がこう聞くと、加賀は俺の方を指差した。
俺はなんて言うか焦った。
アレは教室にいたくなかったからの嘘だったなんて今更言い出しにくかったからだ。
「えーと…なんだかフラフラするような…貧血かも」
俺は咄嗟の嘘を思いついた。
すると保険医は悩んだように手を顎に付けた。
「あぁ、Aくんと蓮くんは今年大きな事故に遭ったからそれの影響かも知れないわね
Aくん、前にも倒れたし」
加賀はひたすら俺に目線を合わせないようにしていたけれど、チラチラと俺を心配する目で見ていた。
俺はそれに気がついていたが、あえて加賀の事を触れなかった。
「だから、休んでいってもいいですか?」
俺は目に入ったベッドを指差した。
「そうした方がいいわ、ゆっくり休みなさい」
保険医は俺をベッドに寝かすと、加賀を授業に返しに行った。
保健室の中はたちまち俺だけになった。
なんだか寂しいような気分になり、孤独感が増した。
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三日月 - いつも素敵な小説ありがとうございます。他の作品もたくさん読ませていただいてます(*^^*)いつまでも応援しています!更新頑張ってくださいね( ´ ▽ ` )ノ (2015年11月27日 6時) (レス) id: 05c649cfe0 (このIDを非表示/違反報告)
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