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「あ…、」






…まだ誰も起きてこない朝、洗面所で歯を磨いていると

侯隆君がふらっとやって来た。



私はシャカシャカと歯磨きの手を止めないまま、

一歩下がって洗面台を譲ろうとする。



と。






「…っ、?」



横「…」






後ろから、とんっ、とぶつかってきて洗面台に両手を置くから、

そのまま洗面台と侯隆君の間に挟まれた。



ね、寝ぼけてる…?



思わず歯ブラシをくわえたまま手を止めて、正面の鏡を見る。



…いつにもまして、すん、とした真顔の私と、

同じく真顔で、斜め上から直接私の顔を見下ろしてる侯隆君。



一体、何…。






横「…何考えてんの、今」



「…」






すぐ近くから降ってくる声。



…それはこちらの台詞なんですが…。



質問の意図がよく分からないのと、

歯ブラシをくわえたままなのとで答えられずに固まる私に、

冷静そうなその視線は正面へと移った。



鏡越しに目が合う私達。



お互い表情を変えるもことなく、数秒経つと。



はぁ…、とこれまた意図の分からない溜息が聞こえて

私の耳を掠めた。



俯いた頭が髪に当たってちょっとくすぐったい。



鏡の中でも顔が見えなくなってしまった状態で、

どうしようもなく絞り出すような声を発する。






横「…俺、あかんぞ…」



「ん…?」






歯ブラシをくわえたままもごもご、

その意味を尋ねることもできなくて。






横「…おらんくなるなら、俺、やっぱり…」



「…」






はぁ、と小さくまた溜息。






横「…正直、自信無い、」






声にもならないくらいの微かな呟きが私の耳にギリギリ届けば、

ぱっと台についていた手を離して、

拗ねたようにも見える伏せた目が鏡に映った。



そしてそのまま、

「…ごめん」、とだけ残して洗面所を出て行く。



一人残されて、口の中が泡だらけになりながら呆然とする私。



…今の、って。



口をゆすいで、歯ブラシとコップを片付けてから、

もう一度正面の鏡を見つめた。



…もうとっくに映っていない侯隆君に向かって、

ようやく返事をする。






「…このタイミングで、そんなこと言わないでください…」






固まっていた自分の顔が、ほんの少しだけ崩れた。



…六月になるまで、あと二日。



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作者名:黒葡萄 | 作成日時:2022年5月5日 8時

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