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錦「…はぁ…」
村「…さっきから異常な数の溜息が聞こえてくんねんけど」
錦「…はぁぁー…」
村「目合ったまま吐くな、どうしたんや」
錦「……Aにキツい当たり方してもうた…」
村「え？なんや珍しいな、何かあったん？」
錦「それは…まぁ…色々、」
村「…お前もちょっと疲れてるんちゃうか？」
錦「え、」
村「最近特に頑張ってくれてんのは分かるけど…
根詰めすぎひんようにな」
錦「…」
.
安「…あ、そうや」
「何ですか」
倒された姿勢が案外落ち着いて、そのまま寝転がっていると
章大君が思い出したように切り出す。
安「…六月の最初のライブの日程、一応伝えておくな」
「六月…」
…つまり、復帰して参加する場合の最初のライブってこと？
「…いつですか？」
その返答を聞いて、一瞬固まった。
その日って、確か…
最終面接の日だ。
第一志望の、最終面接の日付。
「…」
安「…でも、もしバンドに戻るって決めても、
無理にライブに参加しろとは言わんから。
決めてからまた徐々に段階踏んで戻ってきたらええし、」
「な？」って首を傾げてまた顔が近付く。
フリーズしかけた脳が、何とか元の動きを取り戻す。
安「…その間、俺はずっとAちゃんの傍におるよ」
落ち着く声が、また優しく響く…けど。
「…ち、近すぎませんか…」
安「えっ？やから傍におるよって」
「いや、そばすぎというか、そばにいすぎというか、」
安「え〜？？」
再び鼻先がちょん、とくっつく感触がするから、
目を瞑って逃げようと顔を逸らす。
「近いっ！！」
安「あ、こら逃げない」
「章大君…最近特に距離感おかしなことになってます！」
安「えぇ、そーかぁ？」
自覚があるのかないのか、曖昧に微笑んでみせる。
まぁ…今に始まったことではないけど…。
同じ部屋だし、色々ある度に本当に傍にいてもらってるから
心の距離と一緒に
自然と物理的な距離感も近付いてしまったのだろうか。
安「…嫌なん？」
「う…嫌、というか…その聞き方はずるいです」
安「嫌ではないんや」
「でも！…ほ、ほどほどにしてください」
安「はいはい分かった分かった、笑」
はぁ…ほんと、一緒に住んでなかったら
今頃私どうなってたんだろう。
…亮君も、部屋で今何か思ってるのかな。
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作者名：黒葡萄
| 作成日時：2022年5月5日 8時
