温度感 (黄) ページ42
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「…でも私、やっぱり苦手みたいです」
安「うん？」
「実は…私が急にライブに出られなくなった日、
…亮君に言われたんです。"何かあるなら言ってくれ"、って」
安「ああ、それであの時二人で…」
「そう…でも、結局上手く伝えられないまま、
全体の話し合いになって休養が決まって。
…もっと早く、色んな段階で少しずつでも
素直になれてたら良かったのかもしれないけど…できなかった」
…そう考えると、やっぱり素直になるのは苦手みたいだ。
あの時の亮君の切ない顔を思いながら話すと、
章大君はそっか、と優しく返して
安「…今からでも、遅くないんやないかな」
「え…？」
安「確かに亮は、Aちゃんが頼ってくれるのを
ずっと待ってたと思う。素直に相談してほしかったと思う。
…今でも、ずっと」
「…」
…あれから、二人きりではまだ話せていない。
そのことも、章大君は見抜いてたのだろうか。
安「…今、Aちゃんが自分の中に抱えてること、
頼りたいこと、相談したいこと…全部、言うてみ？」
亮きっと、嬉しいと思うで、って笑いかける。
…最近、先輩達が思い出させるようなことばかりするから、
私も自分で振り返っていた。
一度は離れた私達が、再び集まって活動を始めるまでの時期。
色んなことがあったけど…
一番最初のきっかけは、章大君と亮君だ。
二人がずっと音楽をやめなかったから、
私も、他の人達も戻って来られた。
私が今、ここにいるのは…
「…亮君、」
錦「A…？」
あの時、歌い続けていた亮君が、そこにいたからだ。
錦「…ど、どうした、」
章大君に言われたことを一晩かけて考えて、
歩き出してみた先に、二人だけの空間。
訪ねた部屋には信五君はいなくて、
亮君が一人でギターを抱えていた。
突然入ってきた私の顔を見て、
若干戸惑いながらギターを傍らに置く。
「…少し、お話してもいいですか」
錦「…今？」
こくりと頷くと、
亮君は一瞬だけ何かを考えるように視線を外して…
でもその後すぐに、
錦「…分かった、こっち来て、」
って、私を隣まで導いた。
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作者名：黒葡萄
| 作成日時：2022年5月5日 8時
