布団 (赤) ページ25
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「…」
…そろそろ寝ようと思って部屋に戻ると、
何故か不自然に膨らんでいる自分の布団。
章大君は今ちょうどお風呂に入ってるはずだし、
え、誰…。
恐る恐る自分のベッドに近付いていき、
広げた覚えのない掛け布団にそっと手を伸ばす。
そして…
がばっ
「…ひぃぃっ」
渋「…」
「な、な、何してんですか！」
勢いよく布団を開けると、そこにはうつ伏せ状態のすばる君が。
こっち側に向けられていた顔、
大きな瞳だけがチラッと動いて私を見る。
目は合ってるのに、超真顔、超無言。
…え？これ私が悪いの？
「あの…」
渋「なに」
「…ど、どいていただけませんかね…」
渋「なんで」
「なんで」
この謎な状況もすばる君の言動も理解できるわけがなく、
何故私の布団に隠れていたのか、聞きたいのはこっちなのに…。
だけどすばる君は当たり前のような顔で平然を保ったまま
堂々と体を起こして、
私が剥いだ掛け布団を掴み、マントみたいにくるまる。
…お顔だけ出てて、かわいい、けど。
全然退く気配は無く、じっと私を見つめたまま。
渋「…ここ、来て」
ちょっと後ろに下がって、自分が座っている前をぽんぽん叩く。
それが優しくて真面目な声だったから、
ふざけてる訳でも無いんだと思って
少し躊躇いながらもベッドの上に膝を乗せる…と。
渋「ああ、ちゃう、逆」
「逆…？」
渋「こっち」
足を乗せたまま首を傾げる私の腰に手を回して、
くるっと回転させるように動かす。
それに従って、そのまま後ろ向きにベッドに座る私。
…すばる君の顔、見えませんけど。
と思ったら、次の瞬間には後ろからばさっと
布団ごと包み込んできた。
よく分からないまま、お腹にぎゅうっと巻きつく腕。
…あれ？
この感覚、前にも一度あったような…
渋「…」
背中にぐりぐり、と頭を押し付けられる。
あ、これ…あれだ。
前に、すばる君のご実家にお邪魔した時の。
バンドに連れ戻そうとして、侯隆君と二人で行って、
でも上手くいかなくて…
その後私が忘れ物に気付いて取りに行ったら、
確かその時、こうして、
渋「…俺さ、あんとき、」
「…」
渋「…Aと再会できてなかった時、
俺、全部あかんかってん」
後ろから唐突に聞こえてきた声は、言葉とは裏腹に穏やかだった。
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作者名：黒葡萄
| 作成日時：2022年5月5日 8時
