休養 ページ22
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『お知らせ』
『ボーカルメンバーの都Aについてですが、
当面の間、活動を休止させて頂くこととなりました。
休止期間中は七名でのバンド活動となりますが、
今後とも応援のほどよろしくお願い致します。』
…五月の頭。
話し合いの末に
一か月間の休養期間を設けることで一旦落ち着いた私達は、
ツイッターでもそのことをお知らせとして投稿した。
やめると言い出した私を、引き止めてくれている先輩たち。
そんな正反対の意見から至った現状では
一か月後にどうなるのかもはっきりと説明できないため、
あえて "一か月間" という期間は表には出さないことにした。
それも先輩達の気遣いだ。
けれど、期間も理由も書かなかったことで、
それを目にした人たちからは予想以上の反響があった。
歌の不調が、とか、体調が、とか、精神面が、とか。
よく見てくれている人からは、去年の付きまとい行為のこととか、
ついこの前のライブに突然出られなくなったこととか。
実に様々な原因を挙げられて、心配してくれる声もあった。
それはとても温かくて、
もうこのまま活動を離れようとしている自分にとっては
申し訳なさや罪悪感すらも感じたけど。
『そういえば大学四年生だっけ？
進路的にこのまま脱退しちゃうのかな』
他人から今後のことを言い当てられると、
それはそれで、自分の未来を客観視するようで何だか切なかった。
『ニバスタどうなるんだろう』
ニバスタ参戦に向けて、色々と準備し出している様子の先輩達。
私抜きの七人で予選に参加している所を想像すると、
それだけで凄く寂しくて悔しい気持ちに襲われそうになる。
でも、きっとその分上手くいって、お客さんも盛り上がって
大会も勝ち進むんだろうなと思うと、
遠くから彼らを眺めていた想像上の自分も、
拍手を送るようになる。
…正直、休養を発表して
もう自分が人前に立って歌うことも無いんだと思った途端、
とてつもなく気持ちが楽になった。
張り詰めていた緊張感が一気に緩むように。
こんなにほっとして心穏やかになれるなんて、
自分でも驚くほどだった。
久しぶりによく眠れる夜が訪れて、ようやく
自分はバンド活動に対してそこまでストレスを感じてたのか、
と初めて気付けた気がした。
…やっぱり、離れるべき、なんだろう。
目が覚めて少し余裕ができた朝、そう自分の考えを確かめ直した。
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作者名：黒葡萄
| 作成日時：2022年5月5日 8時
