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考えてみれば、当たり前だ。
就活に取り組んでいることを聞いて
好意的に思わない親はいないだろう。
『…ほら、Aこの前は
バンドの方を頑張りたいって言ってたから…。
お父さんと心配してたの。
…もちろん、バンドや大会のことは応援したいけどね？
でも、上手くいくかどうかは分からないし…
とりあえずでもやってくれてるなら、良かった』
「…」
なんて正直な…正論。
"上手くいくかどうかは分からない"
その事実は、覚悟の足りない私の態度を曖昧にさせていた。
『大変だとは思うけど、バンドもやりながらで良いから
就活も頑張ってくれたら嬉しいかな』
「…」
『…あ、お父さん代わる？はいはい、
…A、ちょっとお父さんに代わるね』
「え、あ…」
『…もしもし、A』
「…お父さん、」
急に相手を交代されて、私もちょっと身構える。
お父さんが電話代わるなんて、珍しい…
『…考え直したか？就職するのか』
「それは…」
『…就職する気が無いなら、Aが言っていた…
大会で優勝ができなかったら、どうするつもりなんだ？』
「…」
『分かってると思うけど、
いくらバンドで活動していくと言っても
成功しない限りそれは職が無いのと同じだよ。
将来のことまでちゃんと見据えた上で、
今きちんと就職活動をしときなさい』
電話越しでも伝わってくる、はっきりとした厳しいトーン。
…きっと、就活への集中を促すためには、
今の時期に伝えるのが一番ちょうどいいタイミングだから。
一度無回答のまま放置していた私に、
もうこれが最後だぞ、これ以上は言わないぞ、と
言っているようで。
私は一人、息を吞んだ。
『…別に、就活をしながらでも、就職をした後でも、
音楽は趣味としていくらでもできる。
大会のことだって、夏にあると聞いたぞ。
その時期なら内定を取ってからでも出られるだろう』
「…それは、そうかもしれないけど…！」
全てを決めつけてくるような言い方に思わず腹を立ててしまう。
夏までに内定を取るなら、
それこそ本気で就活に取り組まなきゃいけない。
バンドの練習にも、ライブにも参加するのが難しくなって、
それで本当に内定が取れたとしてもその後の大会で優勝なんて…。
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作者名：黒葡萄
| 作成日時：2022年5月5日 8時
