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安「亮、Aちゃん…!」



「あ…」






お互い少し落ち着きを取り戻し、静まり返った空間に

間髪入れず玄関のドアの音がしたと思ったら。



章大君が慌ててこちらへ走って来た。






安「亮がAちゃんの連絡見て急に帰るって言うから…

慌てて追っかけて来たけど、皆ももうすぐ帰って来ると思うわ」



「…そ、ですか」






…亮君一人で急いで帰って来たんだ。



なんて思いながら、気まずくて顔が見れない。






安「ん?どした?何か…話してた?」



「あ、いや…」



錦「いや、何でもないよ」






そう?なんて言って

荷物を下ろそうと部屋の奥へ入っていく章大君を

視線で追いかけていると。



「…A、ごめん」って目を逸らしたままそれだけ言って、

耳の上辺り、軽くぽんぽんと触れてくる亮君。



それがその場を一旦収めるための言葉だということは

すぐに分かった。



私はもやもやしたまま、章大君が戻って来て。






安「そしたらちょっと…今日のこと、後で皆で話し合おか?」



錦「…うん。そやな」






二人がそう言い合うから、私は床を見つめたまま

勇気と一緒に声を発する。






「…いや、私から、皆さんに話します」






.






横「やめるって…いきなり何を言い出してんの」



村「まず…事情を聞かないことにはな?」



大「…とりあえず、

Aちゃんも一旦落ち着いてからで良いから…ゆっくり話そか」






章大君と亮君の間に挟まれて、

ぽろぽろと無遠慮に溢れてきてしまう涙を必死に抑える。



夜、リビングで全員が集まって。



今日あったことも何もかも全部すっ飛ばして、

「やめます」と先に結論だけ言ったつもりが…



それ以外の部分まで汲み取られたように、

皆が私の様子を伺い、心配な顔をする。



やめて…違う、そんな顔をさせるつもりで言ったんじゃ…






「っ…もう、やめたい…終わりにしたい……」



錦「A…」



安「Aちゃん、一回落ち着こうか?な、」






ティッシュを握った手で顔を覆いながら、

そこに声を押し潰すようにして

半分無意識に繰り返す「やめたい」。



止まってほしいのにしゃくりあげてしまうのが苦しくて、

自分でも何が何だかよく分からなくなってくる。



すぐ傍でかけてくれた章大君の冷静な言葉に、

ギリギリ保たれた私の理性的な部分が働き、何とか頷いた。



そうだ、こんな状態じゃ話せない…



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作者名:黒葡萄 | 作成日時:2022年5月5日 8時

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