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安「…ん…？」
「…！」
布団をかぶってどうにか声を押し殺しながら泣いていたけど、
気付かれませんようにと願っていた章大君が
起きる気配がして、少し焦る。
…息をひそめて、涙を飲み込んで、震える唇を噛んで…。
安「…A？」
眠たそうな声で小さく呟く。
私の顔も涙も見えていないはずなのに、どうして…
もぞもぞと布が擦れ合う音がしたと思えば、
こちらの布団まで近付いてきた感じがする。
安「起きてるの…？」
「…」
そっと布団をめくられて、顔が覗かれた。
…勝手に流れていく涙も拭えないし、
流石にこのまま寝たふりできる自信も無くて、
大人しく体を起こす。
安「…どしたぁ、大丈夫…？」
「いや…」
優しく優しくそう言って、軽く首を傾けるから、
私は顔にかかった髪を払うふりで涙を拭い去るけど…
安「泣いてる、」
その手が掴まれて、同じベッドに乗る体。
真っ暗な部屋の中、私の目を間近で見つめた。
思わずしたまばたきで、溜まった涙があふれる。
安「…A」
「っ…」
手が引かれ、ふわりと抱きしめられた。
しっかりとした腕が回って、とんとん背中をさすってくれる。
その肩に顔をうずめながら、
安心の感情なのか、また新しく涙が伝ってしまう。
…寝てたはずなのに、何で気付いて…
安「…俺、言うたやろ？
Aが何か誤魔化しても、絶対気付くって」
「あ…」
耳元で囁かれるその台詞に、ピンと来る。
ルームシェアを提案した時、言ってくれた言葉…。
…だからって、自然と目が覚めたとでも言うのだろうか。
不思議なくらい力強いその言葉に、生温い涙が落ちて
鼻をすすると、隙間が無くなるくらいぎゅっと体がくっつく。
安「そのためにここにおるんやから。
…安心して、泣いてええよ」
「…うん…っ」
安「ん。よしよし…」
とめどなく溢れてくる涙を、柔らかく抱き留めて。
安「…何か、あったん…？」
問いかけるのは、どこまでも優しく、あたたかな声色。
「……っ悲しくて…」
それだけ伝えると、頷きながら
…そうかぁ、ってゆっくり後頭部を撫でる感覚。
でも、どうして…
どうしてこんな、涙が止まらなくなってしまうほど。
何がこんなにも悲しいのかまでは…自分でも説明できなかった。
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作者名：黒葡萄
| 作成日時：2022年5月5日 8時
