暗闇 ページ12
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四月も半ばに入り、
私が頻繁に黒い闇の中へと思考を沈み込ませるようになったのは、
この辺りからだった。
…一番最初に思い出すのは、あの夜のこと。
その日は、就活の面接に、ライブと、予定が立て込んでいた。
しかし面接はまた自分の中の迷いが露呈して上手くいかず、
途中で心が折れてしまい
自分でも分かるくらいに感触が良くなかった。
未だに選考も上手く進まない、内定ゼロの状態で、
今回もきっとダメだった…。
そして追い打ちをかけるかのように、
また送られてくるお祈りメール。
心身ともに疲労感が凄くて、思わず深い溜息をつく。
だけどいつまでも落ち込んでいる訳にもいかず、
予定に押されるようにしてライブに向けて準備、からの出番。
必死に気持ちを切り替えて集中しようとするけど、
スランプからは抜け出せないままだし、
せめてこの空虚感が伝わらないようにと
声をコントロールしようとしても、やっぱり思うようにいかない。
それに…歌ってる最中、あの小さな画面で見た
スランプを指摘するような言葉がいくつもよぎって、
それが聴いている人の目と重なっていって…。
今まで感じたことの無い、恐怖感に襲われた。
こんな歌で、人前に立って良いのだろうか？
深く考えたことの無かった疑問が浮かんで、怖くなった。
周りには、今日も集中して全力で演奏に励む先輩達。
その質も熱量も今の私とは比べ物にならなくて、
同じ曲の中にいるはずなのに一人だけ違う所にいるみたいだった。
…"ボーカルさえ上手くいけば"、
私さえ、上手くいけば…
"後は最強"…？
…じゃあ、私がいなくなったら？
私が歌わなければ、このバンドは、もっと良くなる…？
"ニバスタ今年は厳しい"
なら…私が、いなければ。
もっと、先へ進める…
今のままじゃ、私が…、
"足を引っ張ってる"
"邪魔してる"
…自己嫌悪、自分で勝手に生み出した言葉が、
誰かに言われたような勘違いを起こして、苦しくなってくる。
…沈んでいく先に底なんて無くて、ただ、深く深く溺れていく。
「…っ、」
もう皆寝静まった真夜中。
考え出した脳が暴走して、
いつの間にか涙を零していたことに、
頬を伝って枕に落ちていく間に気付いた。
…怖い、苦しい、辛い…
真っ暗な夜に、冷たい気持ちばかりが流れ落ちていく。
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作者名：黒葡萄
| 作成日時：2022年5月5日 8時
