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丸「…Aちゃん?」



「…」



丸「Aちゃーん、」



「…」



丸「…A!」



「はっ…」






テレビを眺めながらぼーっとしていたら、

いつの間にかMCの出番は終わっていたし、

目の前に隆平君がいるし。



だけどそんな私の様子を不自然に思ったのか、

隆平君はちょっとだけ何かを考えるような顔でフリーズ。



ああ、何か余計な心配を…






丸「A、こっち向いて」



「え…、!?」






呼ばれるままに、隣に座って来た隆平君の方を見ると…



…何故かめちゃくちゃ変顔をしている。






「え、ちょっ…ふふ、何ですか、急に…っ、笑」






何のフリも無く唐突に、

しかも黙ったままやるから何だかシュールで、

お腹の底からくくく…と笑いが込み上げてくる。






「なに、まじで…、やめて…あはっ、やめて!」






耐えきれなくて目を逸らそうとしても、

そのままの顔で追いかけてくるし。



一層ツボにハマる。






丸「すぐお返事しない子は食べちゃうぞぉ〜?」



「わぷ、っ食べないで!怖い怖い!笑」



丸「あはぁっ、子供か!」






両手でほっぺたをぷにっと挟まれて、顔近付けられて、

笑いながらぎゅっと目を瞑ると

ようやく隆平君も変顔をやめて一緒に笑った。



うりうり、と指先で頬を上げ下げされる。






丸「…良かったぁ、笑ってくれて」



「ふへ…?」



丸「何か久々に見れたわぁ♡」



「…」






至近距離で癒されたように目を細めて、にんまりとした笑顔。



その顔に私の方こそ癒されながら、

もしかして、と思う。



掬い上げられてから気付く、自分が沈んでしまっていた沼。



あぁ…駄目だ、多分私、酷い顔してた。






丸「最近お疲れ気味やと思うから、ちゃんと休んでな」



「あ、…ありがとうございま、ふっ」



丸「ふ。笑」






最後に思いっきり頬をむにゅっと押されて、

お礼もまともに言わせてくれない。






丸「ニバスタに向けて、温存しとかな!」






私にも自分にも言い聞かせるようにそう言って、

「お風呂入ってこよ〜」なんて行ってしまった隆平君。



…ニバスタに向けて…。



忠義君にも言われたし、隆平君にもきっと心配させて…

気を付けなきゃ、と思える時は思えるのに。



バンドのことを考えると、また…






『エイト、ボーカルさえ上手くいけば

後は仕上がってきてて最強なんだけどな』






そんな文字列が、勝手に思い出される。



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作者名:黒葡萄 | 作成日時:2022年5月5日 8時

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